授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
言われるがままアルコールで消毒していると、翔太君が泣き出してしまった。

「やっぱりお母さんに抱っこされてるほうがいいんじゃない? 知らない人に抱っこされるってわかったんだよきっと」

おろおろする私を横目に聖子が顔色ひとつ変えず翔太君をあやす。

「こら、翔太、男の子なんだからもっとドン! と構えなさい。ほら、もう平気よ」

聖子ってば、新生児から手厳しい躾ね……。

私はいいよ、と言っておきながら昨夜“赤ちゃんの抱っこの仕方”なるものを予備知識としてちゃっかり下調べしていた。首がグラグラして座っていないから「首を支える」「身体を密着させる」「背中が丸くならないようにする」と基本的なポイントはしっかり押さえてある。

おずおずと包み込むように翔太君を腕に抱くと、なんとも柔らかくて小さくて、それにいい匂いがする。

「あ、泣き止んだ。菜穂の抱き方が上手なんだよ。いつか菜穂もお母さんになるんだから、ね?」

「う、うん」

腕に抱くことに精一杯で翔太君をあやす余裕なんてなかった。意外にずしりと重く、手足はプニプニしている。
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