授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「黒川さん、光弘さんに気を遣ったんですね」

「え?」

日も暮れて、すっかりオレンジ色から深い藍色に変わった街が分厚いガラスの向こうに広がっている。目の前には真っ白なクロスの上に並べられたフレンチのコース料理。

今夜は黒川さんがデートのディナーにレストランを予約してくれていた。しかも通された席は会員じゃないと入れないというプライベートルームだ。

「まぁ、彼はああ言ってたが……不在中にほかの男が自分のテリトリーにいるって、なんか微妙だろ? たとえ君が一緒にいたとしてもね」

「男心ですね」

「そういうこと」

テルミドール仕立てのオマール海老ロティを口に運び、黒川さんは優雅にビンテージワインが注がれたグラスを手にしている。こういうときの彼は思わず見惚れてしまうくらいに絵になる。

聖子のマンションを後にしてから、私たちはディナーの予約まで銀座でショッピングを楽しんだ。見ているだけでも満足していたのに黒川さんは目についたネックレスや服をあれこれプレゼントしてくれた。
< 111 / 230 >

この作品をシェア

pagetop