授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
不意に声をかけられハッと我に返る。そして慌てて振り向くと、息を呑むような美人な女性がレジ前に立っていた。

「あ、はい! すぐ行きます」

ぼんやりしてる場合じゃなかった! 仕事中! 

「すみません、お待たせしました」

レジに立って改めてその女性を見る。

わ、綺麗な人……。

まるでファッション雑誌から出てきたみたいなモデルみたいだ。手足が長くて背も高い。
艶のある長い黒髪は背中まで伸びていて、キリッとした目は利発そうだ。通った鼻筋の下には形のいい赤い唇。左右対称に整ったその顔立ちに私はつい見惚れてしまった。

「あら! 紗季ちゃんじゃない!」

「あ、弥生さん、お久しぶりです」

イートインのテーブルを拭き終わった弥生さんがレジに戻ってくると、“紗季ちゃん”と呼ばれた目の前の女性がにこりとして会釈する。サラリと肩から髪の毛が雪崩れて、シャンプーのいい匂いが今にも香ってきそうだ。

「いつ戻って来たの? 半年ぶりかしら? また一段と綺麗になったんじゃない?」

「ふふ、たった半年じゃあんまり変わらないかも。昨日の夜に帰国して、今日から仕事です」

私はなにがなんだか話についていけず、目をパチパチさせて見ているとその視線に弥生さんが気づく。
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