授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「迎えに行けなくてすまなかったな、裁判所に書類提出するだけで今日はかなり時間食った」

チャポン、と水音が浴室に響き、フローラルなボディソープの香りを含んだ湿気がゆらゆらと揺れている。

「いえ……黒川さんも疲れてるのに……大丈夫です」

湯船に浸かってすでに血の巡りが良くなっているというのに、後ろに感じる黒川さんのダイレクトな肌の感触と体温が相まって、のぼせそうになっているのか頭の動きが緩慢だ。

黒川さんの膝の間にすっぽり身体を収め、時折首筋にチュッと甘く唇を落とされる。彼の手がお腹や胸を這うたびに肩が跳ね、その反応を黒川さんはクスクスと楽しんでいた。

「……一応守秘義務があるし、詳しい内容は話せないんだが」

ふと、黒川さんが私の胸を弄ぶ手を止める。

「先日、金田さんの離婚調停が成立したんだ。田舎の両親と一緒に暮らして一からまた人生やり直すって、君にももう一度お礼を言っておいて欲しいって頼まれた」

「え、そうだったんですか、よかった……」
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