授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「今日は暇ねぇ……」

午後から雨脚が強まり、店内にはいつもの半分以下のお客さんがまばらにイートインスペースで寛いでいた。

「これじゃ、パンが余っちゃいますね」

店頭に行儀よく並べられた出来立てのパンがなんだか可愛そうになってくる。

「まぁ、こんな日もあるわよ。坂田さんとこに今夜お裾分け持っていく? なんだかいつもあまりものみたいで悪いんだけど……」

「ここのお店のパンは美味しいってみんな喜んでますよ。私でよければ持っていきます」

「そう? なら頼んだわ。ねぇ、菜穂ちゃん、最近仕事無理してない? ちょっと辛そうなときがあるから……」

「え?」

実は今朝からずっと頭痛に悩まされていた。きっと低気圧のせいだからと思って気にしていなかったけれど、時々ズキッとして顔をしかめていたところを、たまたま弥生さんに見られてしまったのかもしれない。

「あんまり頑張りすぎないでね」

「はい。大丈夫ですよ」

天気予報によると明日も雨らしい。梅雨入りにしてはまだ早い時期だけど、こんな天気じゃ気分も憂鬱になる。

黒川さん、今頃何してるかな……。
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