授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
『しかも正当防衛を主張してる男、大手企業のお偉いさんみたいでね、弁護士をつけてきたけど、負ける気がしないし。だから菜穂ちゃんは安心してお父さんの仕事を見守ってて』

「う、うん。わかった。お父さんも大変そうだね」

私には父に報告しなければならないことがある。

次に父と話す機会があったら“弁護士の人と婚約した”そう言おうと決めていた。けれど、今の父の忙しい状況ではまともに話を聞いてくれなさそうだ。これは一旦家に出向いて直接会って話した方がいいかもしれない。

「お父さん、あのね、今度話したいことがあるの」

『話したいこと? なにか欲しい物でもあるのか? ん?』

「そうじゃなくって、直接会ってから話したいんだ」

『じゃあ、うちに帰ってくるってこと? いつでもいいよ……って言いたいとこなんだけど、数週間はあまり時間が取れそうにないんだ。はぁ、残念。あ、そろそろ行かないと、じゃあまた電話する』

そう言って父は慌ただしく電話を切った。

はぁ……お父さん、ちゃんとわかってくれるかな。

婚約した報告をしたらどんな顔をするだろう。石像のように固まって、開いた口が塞がらない父の姿が目に浮かぶ。

とにかく、ちゃんと話さないことにはなにも始まらないよね。

スマホカバーをパタンと閉じ、バッグへしまうと仕事へ戻った。
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