授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
あまりにも唐突な質問をぶつけられ、すぐに返事をしない私をじれったく思ったのか紗季さんが話しを続けた。

「所長から聞いたのよ。一緒に住んでるって、他言しないようにって言われたけど……その本人に聞くのは他言にはならないでしょう?」

そ、それはそうだけど、それに慧介って……。

まだなんとなく面映ゆくて黒川さんのことを下の名前で呼んだことがない。自分以外の女性の声で“慧介”だなんて言われると気持ちが勝手にささくれ立つ。

「うーん、それってエンゲージリング?」

目ざとく私の胸もとの指輪に気づいた紗希さんは腰をかがめると、食い入るように指輪を見つめた。

「黒川さんと婚約してるのは、本当です。まだ両家に話しはしてないんですけど」

「ふぅん、事後報告ってことね。慧介のお父様、なかなかクセが強くて頑固者よ。あなたのお父様みたいに」

目を丸くしている私を、紗季さんはクスッと笑って形のいい唇を意味深に歪めた。
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