授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「真由が大手のアパレルメーカーに就職してしばらくしたある日、彼女が会社の資金を横領したって会社から訴えられたの」

「え? 横領? まさか……それって、坂田所長が真由さんを冤罪から救った話と関係ありますか?」

「なんだ、そこの部分は聞いてるのね」

黒川さんは坂田所長のことを“妹の冤罪を晴らしてくれた恩人”と言っていた。そのとき、どんな濡れ衣を着せられたのか気にはなったけれど、二の足を踏んで踏み込めなかった。訴えられた罪状が“横領”だったと聞き、信じられないという思いで何度も耳を疑った。

「当時、真由が付き合ってた馬鹿上司が腑抜けだったのよ。横領してたのはその男で、バレそうになった途端、真由に全部罪を押し付けたの。裁判は長引いたけれど、坂田所長が地道に集めた証拠が冤罪だったと証明してくれて……真由は無罪になった」

紗季さんが一旦口を閉じると、不自然な沈黙が室内に落ちる。実はこの話にはまだ続きがあるのではないか、と思わずにはいられない。
< 143 / 230 >

この作品をシェア

pagetop