授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「黒川さんは、真由さんを大切にしたい気持ちを恋愛とはき違えてるだけなんだって……だから真由さんに似ている私に面影を重ねて……お飾り婚約者だって言われました」

「なんだって?」

案の定、黒川さんの顔色がみるみるうちに険しく変わり、目つきに鋭さが増した。

「お飾り婚約者だって? そんなわけないだろ! 確かにそう言われたんだな? くそ」

彼は珍しく口調を荒げ、なんとか理性で押さえているものの、小さく震える声には怒りが滲んでいた。すると、急に腰を跳ね上げるようにして黒川さんがベッドの縁から立ち上がる。

「あの……黒川さん?」

「今からあいつに電話して――」

「だ、だめっ! やめてください!」

慌てて私はベッドから飛び出して、勢いよく部屋から出て行こうとする彼の背中にしがみついた。一日中寝ていたせいで一瞬立ち眩みがして、額を背中に押し付けながらギュッと目を閉じる。

「いいんです。黒川さんの口からちゃんと“そんなわけない”って言ってもらえただけで……」
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