授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
問答無用でピシャリと言い放たれると、その場を誤魔化す言葉さえも吹き飛ばされてしまう。きっと父から尋問を受ける被疑者はこんな気分なのかもしれない。

「私に黒川さんと別れろ、ってそう言いたいの?」

半ば苛立ち気味に尋ねると、意外にも父はゆっくりと首を振った。

「本当はそうしてもらえるといいのだが……何も今すぐというわけではない。恋愛するのは自由だからな」

「え……?」

「しかし、いずれは別れてもらう。恋愛と結婚は別ということだ」

一瞬、沈みかけていたものが上向きになろうとしていたけれど、父のこのひとことで打ちのめされた。黒川さんと恋人として愛し合っても、結婚となるとその先はない。ということだ。

「そんな、ひどい!」

「菜穂に相応しい結婚相手をこちらですでに選んである」

「選んであるって……どういうこと?」

父がこんな強引だとは思わなかった。絶望と落胆で頭の中が真っ白になっていると、父が口を開いた。

「板垣聡、彼がお前の結婚相手だ」

板垣聡……? まさか!

「板垣刑事のこと?」

「そうだ。そのように黒川君にも伝えてある」

嘘でしょ……しかも黒川さんに言ったなんて――。
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