授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「菜穂さんは、黒川さんという方と……その、親しい関係のようでしたから、俺が余計な事を言えば、あの松下検事のことです、即刻実家に連れ戻されていたでしょうね」

「え……」

お父さんに言わなかったのは、私と黒川さんに気を遣ってくれたの? でもどうして?

ますます板垣さんという人がわからなくなる。

「先日、父から板垣さんが私の婚約者だと言われました。黒川さんのこと……疎ましく思わないんですか?」

自分の婚約者に恋人がいるなんて、普通に考えたらあまり気分のいいものではないはずなのに、板垣さんは動揺することもなく小さく笑った。

「疎ましいだなんて思いませんよ。俺も先日、父から菜穂さんが俺の婚約者になるという話を聞きました。俺の父は警視総監なんです」

え? けいし、そうかん? ええっ!?

まさか、板垣さんが警視庁のトップの息子……だなんて。

思わず前のめりになってしまいそうになるのをシートベルトに「落ち着け」と抑え込まれる。

今まで板垣さんのことカタブツだとか仏頂面だとか散々な印象を持ってたけど、そんなこと言ったらきっとバチが当たっちゃうよ……。
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