授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
振り向くと、花柄の入ったピンクの三角巾をボブヘアの頭に巻いて、それとおそろいのエプロンをした聖子が重ねられたトレーを抱えて立っていた。彼女は小柄で目鼻立ちのはっきりとした小動物みたいな可愛い系女子。大きな目をクリクリさせてじっと私を見ている。

「う、うん……それがね、今回もだめだったみたい。お祈りメールが来たよ」

お祈りメールとは“今後のご活躍をお祈り申し上げます”とか“充実した学生生活を送られることをお祈り申し上げます”とかいわゆる企業から送られてくる遠回しの不採用通知の俗称だ。

お祈りするくらいなら仕事ください!と、受け取った人はみんなそう思うだろう。それに私は二十五歳で、新卒でもない。充実した学生生活はとっくに二年前に終わっている。

やっとの思いで念願の外資系IT企業に就職が決まって、無事に大学も卒業できた。順風満帆に何もかもうまくいっていた勤続二年目の秋、会社がライバル企業の買収を発表した。自分の会社が業界最大規模のITカンパニーになるということで正直誇らしい気持ちになって、これからもっともっと頑張ろうと意気込んでいた。

そう、あの宣告がされるまでは――。
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