授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
一体どんなところに連れて行ってくれるのだろうと胸を弾ませ、「こっちだ」と言われた方向に歩き出す。そして他愛のない話をしながらしばらく歩いて行くと、スカイツリーのお膝元に佇む小さなビルにたどり着いた。一階に掲げられた看板には「料亭 かつ田」と書かれている。ほかに看板は出ていないから、ビルの上階はどこかの会社のオフィスにでもなっているのだろう。
「ここだ、さ、入って」
そう促されて黒川に続き恐る恐る暖簾をくぐる。
「いらっしゃいませ、あ、黒川先生いつもご贔屓頂きありがとうございます」
着物がよく似合う女将さんらしき人が笑顔で出迎える。
軽く照明が抑えられた店内は落ち着いた雰囲気だった。料亭と聞いて内心どきまぎしていたけれど、芸者さんがいるような所ではなく、さほど広くない店はどちらかというと割烹といった感じだった。カウンターが五席に二人掛けのテーブルが三席。席数が少ないせいか通路が広くて狭苦しさを感じない。
カウンターの奥は調理場になっていて、この店の大将らしき人が忙しなく魚をさばいていた。ずらっと並んだコンロには土鍋が五つ。蒸気穴から盛んに湯気を立たせていたり、鍋肌に水を滴らせていたりと様々な様子が物珍しくて目を引いた。
「すみません。予約なしでいきなり来てしまって……」
黒川さんが恐縮しながら言うと、女将さんが滅相もないといったふうに首を振ってちょうど空いていたテーブル席へ案内してくれた。
「ここだ、さ、入って」
そう促されて黒川に続き恐る恐る暖簾をくぐる。
「いらっしゃいませ、あ、黒川先生いつもご贔屓頂きありがとうございます」
着物がよく似合う女将さんらしき人が笑顔で出迎える。
軽く照明が抑えられた店内は落ち着いた雰囲気だった。料亭と聞いて内心どきまぎしていたけれど、芸者さんがいるような所ではなく、さほど広くない店はどちらかというと割烹といった感じだった。カウンターが五席に二人掛けのテーブルが三席。席数が少ないせいか通路が広くて狭苦しさを感じない。
カウンターの奥は調理場になっていて、この店の大将らしき人が忙しなく魚をさばいていた。ずらっと並んだコンロには土鍋が五つ。蒸気穴から盛んに湯気を立たせていたり、鍋肌に水を滴らせていたりと様々な様子が物珍しくて目を引いた。
「すみません。予約なしでいきなり来てしまって……」
黒川さんが恐縮しながら言うと、女将さんが滅相もないといったふうに首を振ってちょうど空いていたテーブル席へ案内してくれた。