授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「黒川さんは根っから曲がったことが嫌いな人なんですね、悪い事はどんなに隠しても必ず太陽に照らされるって、ち――いえ、なんでもないです」

父がそうよく言ってました。と言いそうになって慌てて口を噤む。できればここで父の話はしたくない。

「悪い事はどんなに隠していても必ず太陽に照らされる……か、なるほどね、その通りだ」

不自然に口を閉じた私を気にも留めず、黒川さんはうんうんと腕を組んで頷いている。

「君もそうなんだろ?」

「え?」

「曲がったことが大嫌いだって、そういう人は目を見ればわかる」

じっと見透かすように見つめられると、まるで催眠術にでもかかったかのように不思議と黒川さんの目に引き込まれそうになる。視線を逸らしたいのに身体が動かない。こんな感覚は初めてだ。

私、黒川さんのこと……好きになっちゃってる? でも、そんなの早くない?

自分にそう問いかけるもその答えを知っているのは私自身だ。彼のどこが好きなのか聞かれてもすぐにポンポン思い浮かばない。けれど無性に気になってそして引き込まれて……たぶん、これが恋に落ちるということなのかもしれない。学生時代に何人か付き合った人はいたけれど、こんな気持ちにはならなかった。

「そろそろ店出ようか」

「あ、は、はい。ごちそうさまでした」

気がつくとすべての料理を食べ終わり、黒川さんの声かけで我に返る。ほんのり酔いも回って身体がふわふわとして気持ちがいい。

「この近くにひと足先に桜がもう咲いてる公園があるんだ。腹ごなしに行ってみるか?」

食事が終わるということはデートも終わってしまう。そう思うと少し寂しい気持ちになっていたところに公園へ行こうと誘われて私はパッと顏を明るくさせた。
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