授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
彼の揺れる瞳が私を見据えている。その目にはいまだに状況を理解していない呆けた私の顔が映っていた。

「出会ったばかりでいきなりこんなこと言われたら困るのはわかってる。けど……俺と、付き合ってくれないか?」

――付き合ってくれないか?

それは行きたい場所があるときに使う“付き合ってくれ”の付き合うの意味じゃないことくらいはわかる。わからないのは、黒川さんみたいなエリート弁護士がなぜ私なんかに告白するのかということ。

私、黒川さんの恋人になってもいいの? 私なんかで本当に……? でも、どうして?

早くなにか言わなければと自分を急かすけれど、うまい言葉が見つからない。

「え、っと……」

頭の中で考えれば考えるほどぐちゃぐちゃになって、曖昧に目を泳がせることしかできなかった。

「返事は急がない。きっとその気にさせてみせる。今日から君の恋人候補として猛アタックするつもりだからよろしく」

満面の笑みでアタック宣言されてしまった。

黒川さん、きっと酔ってるんだよね……? だからキスなんか……。

春の夜風が、答えの見つからないままの私の頬をすっと撫でる。まるで「しっかりしなさい!」と言われているようで、私は高鳴る胸をぐっと抑え込んだ。
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