授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「こんなしがない商店街で空き巣なんかしたってしょうがないのにねぇ。商工会の寄合いでも話題になったらしいから、菜穂も気を付けてね」
「うん、わかった」
不穏な単語がべとりと脳裏に貼りついて不快感が沸く。
空き巣……か。
そう言えば、聖子のお父さん、今日新しく防犯カメラを店内に取り付けたって言ってたっけ。
聖子夫婦と別れると私は坂田弁護士事務所のある交差点に向かって歩き出した。
この時間帯は大抵どこの店も閉まっている。まだ商店街にどんな店があるのか散策しきれていないし、老舗が多く並ぶ商店街はよく言えばレトロで趣のある所だけど、夜はシャッター通りみたいだ。
ん? あの人は……。
事務所のあるビルの入り口で、髪の長いひとりの女性がなにやら落ち着かない様子でウロウロしているのが見えた。なんとなく見覚えのある感じに、初めて坂田弁護士事務所を訪れたときにぶつかってきたあの女性だと瞬時に記憶が蘇る。その女性が私の気配に気がついて振り向くと相手も私に見覚えがあったのか「あ……」と声を漏らした。
「あの、もしかして先日……坂田弁護士事務所の前で私、あなたにとんだ失礼を……」
あのときは冷静さを失っていたのか余裕もなく走り去ってしまったけれど、今の彼女は落ち着いていてぶつかった相手が私だと確信すると何度も平謝りしてきた。
そういえば、金田さんって呼ばれてたっけ……? 黒川さんの依頼人の。
「今から黒川さんの所へ行かれるんですか?」
「うん、わかった」
不穏な単語がべとりと脳裏に貼りついて不快感が沸く。
空き巣……か。
そう言えば、聖子のお父さん、今日新しく防犯カメラを店内に取り付けたって言ってたっけ。
聖子夫婦と別れると私は坂田弁護士事務所のある交差点に向かって歩き出した。
この時間帯は大抵どこの店も閉まっている。まだ商店街にどんな店があるのか散策しきれていないし、老舗が多く並ぶ商店街はよく言えばレトロで趣のある所だけど、夜はシャッター通りみたいだ。
ん? あの人は……。
事務所のあるビルの入り口で、髪の長いひとりの女性がなにやら落ち着かない様子でウロウロしているのが見えた。なんとなく見覚えのある感じに、初めて坂田弁護士事務所を訪れたときにぶつかってきたあの女性だと瞬時に記憶が蘇る。その女性が私の気配に気がついて振り向くと相手も私に見覚えがあったのか「あ……」と声を漏らした。
「あの、もしかして先日……坂田弁護士事務所の前で私、あなたにとんだ失礼を……」
あのときは冷静さを失っていたのか余裕もなく走り去ってしまったけれど、今の彼女は落ち着いていてぶつかった相手が私だと確信すると何度も平謝りしてきた。
そういえば、金田さんって呼ばれてたっけ……? 黒川さんの依頼人の。
「今から黒川さんの所へ行かれるんですか?」