授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「元気出しなって! だめならまた次だよ、次!」

「うん、そうだね……」

明るい声で励まされると一瞬だけ気持ちが楽になる。ポンポンと元気づけるように聖子から肩を叩かれてじんと身に染みた。けれど現実は厳しい。ほとんど実務経験のないペーペーが経験者枠で転職活動なんて苦戦するに決まってる。それは目に見えていたことだ。

ああっ! も~お先真っ暗!

私は絶望とともに肺の底からはぁぁと長いため息をついてカウンターに突っ伏した。

これからどうしよう、早くこの状況をなんとかしないと貯金だって底を尽きてくる……。友達は頑張ってみんな仕事してるのに、私なにやってるんだろ。

「菜穂、あのさ……」

聖子がなにやら改まった口調で言いかけて、私ものろのろと身体を起こして彼女へ視線を向けた。

「もし今すぐにでも仕事が欲しいなら……うちの店で働かない?」

「え?」

「今まで大企業に勤めてたし、こんなしがない下町のパン屋なんかで仕事するなんて心外かもしれないけどさ、ほら、私もう臨月でしょ? そろそろバイトを募集しようかなってお父さんがちょうど昨日言っててね」
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