授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「これは?」

「いつもうちの店からパンをお裾分けしてるんです。金田さんもご一緒に召し上がってください。きっと話し合いもうまくいきますよ」

「ありがとう。私もパンは大好きなの」

先ほどまでの戸惑いが嘘のように金田さんの表情が明るくなる。私もそれを見てホッとした。

私にはこんなことしかできないけれど……。

「頑張って行ってきてください」

「ええ、事務所に入る前にあなたと話ができてよかったわ。決心がついたっていうか」

金田さんはパンの入った紙袋を大切そうに胸に抱え、エレベーターへと消えて行った。

あ、黒川さんに会いに行く口実がなくなっちゃった……。

けど、これから金田さんと話しをするなら、今日のところは帰るしかないかぁ。

私は踵を返し、金田さんの話し合いがうまくいきますようにと心の中で祈りつつ、家に向かって歩き出した。
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