授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
第四章 浅草デート
ベーカリーカマチの人たちと別れ、お泊まりの準備をするために一旦家に戻ると、私は黒川さんに連れられ彼の住むマンションへとやってきた。

まだ築三年と比較的新しい二十階建ての高層タワーマンションで、コンシェルジュ付き。そしてフレームレスパネルのベランダは透明感があって開放的で、モダンな外観を演出していた。ベーカリーカマチから歩いて十分くらいの場所にあり、前に住んでいたマンションと少し造りが似ていた。

「黒川さんは、ずっと浅草に住んでるんですか?」

「ああ」

「職場からも近いですね」

「そうだな」

う、なんか黒川さん……怒ってる?

歩いている間も口数少なくて、なんだか話しかけづらい雰囲気だった。黒川さんの機嫌の悪さは、長い足でスタスタと歩いて行ってしまう歩幅にも表れていた。

――君に少し説教もしなきゃならないしな。

黒川さんの言葉がぐるぐると頭の中を駆け巡る。

私に説教? どうして?

空き巣騒動に巻き込んでしまったから?

私が渋ってまだ黒川さんに告白の返事をしてないから?

雲行きの怪しい表情の原因を色々考えるけれど、まったく見当もつかなかった。

黒川さんの住む部屋は最上階にあり、カードキーを通すとオートで照明が点く。

「入って」

「お、お邪魔します」
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