授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
シャワーを浴びてひと息つくと、すでに日付が変わっていた。今夜、どこで私は寝たらいいのか考えていたら奥の部屋へと通された。

壁際には真っ白なダブルベッドがあり、高そうな木製のクローゼットと姿見鏡。そして坂田法律事務所にあるのと同じタイプの観葉植物が隅に置かれているだけという至ってシンプルな部屋だ。

「えっ、ここって黒川さんの寝室……ですよね?」

「そうだけど?」

「一緒に寝るってこと……ですか?」

ちょっと待って! まだ心の準備が……。

おたおたしながら顔をゆでだこみたいにしていると、黒川さんはクスッと笑って私の肩を引き寄せた。

「もう恋人同士なんだし、一緒に寝るくらいおかしくないだろ? 早速今夜は寝かせない、って言いたいとこだけど……」

甘い水音を短く立てて彼の柔らかい唇が私の額を啄むと、「ひゃっ」と妙な声が出そうになって肩が跳ねる。こんなことくらいで動揺するなんて、よほど経験がないんじゃないかと思われそうでヒヤヒヤする。

「残念だけど、今から書面の起案をしなきゃならない。気にしなくていいから君は先に寝ててくれ」

「書面の起案っていうことは、近々裁判があるんですか?」

「ああ、空き巣のこともあってまだ神経が高ぶっているかもしれないが、ゆっくりおやすみ」

今度は唇にキスを落として、黒川さんは書斎へ入って行った。
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