授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
ふわふわとした感覚に柔らかくて温かな空気。瞼の裏に赤みがさすと次第に眠りから覚めて、うっすらと目を開けた。

「おはよう、よく眠ってたな」

「ッ!? あ、あれ……」

窓から燦々と朝の光が降り注いでいる。その明るさに昨夜とはまた違った部屋の印象を受けた。

いつもの自分の部屋じゃないことよりも、目が覚めたらいきなり黒川さんの笑顔が飛び込んできたことに動揺する。ガバリと身を起こすと、そういえば昨日空き巣事件があってそれからのことをぽつぽつと思い出した。

そっか、私、黒川さんのマンションに来てるんだった。

アラームが鳴らなくても体内時計でいつもの時間に目が覚める。スマホを確認すると、デジタル時計は八時になるところだった。

「朝から君の寝顔が見られるなんて眼福だな」

眼福って……あぁ、私いったいどんな顔して寝てたんだろ……よだれとか垂らしてないよね?

「すまないが、これから遠方で家事調停が入ってるんだ。午前中で終わる予定だからその後すぐに帰ってくる」

慌ただしくコートを羽織り、黒川さんが鞄を手にする。
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