授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
『じゃあ、そろそろ電話切るね。あ、デート頑張ってね~ふふ』

「……え? ちょっと待って、なんでそんなこと聖子が知ってるの?」

かまかけだとしたら完全に墓穴を掘っているところだけど、電話越しでもわかるような私の狼狽えぶりに、聖子はクスクスと楽しげに笑っている。

『さっき坂田所長から昨日の空き巣のことで電話が来てね、ついでに話したんだけど……黒川先生に休みを出したのって菜穂に気を遣ってくれたみたいよ~。坂田所長、ああ見えて人のことよく見てるから。ふふ、じゃあね』

「あ、待っ――」

気を遣ったってどういうこと?そう尋ねようとしたのに電話は無情にも切れてしまった。

もう、聖子ったら……。ッ!? そうだ、デート! 早く準備しなきゃ!

ちゃんとしたお出かけ用の服に着替えて、化粧もして、それから……。

黒川さんは午後には帰ってくると言っていた。あれこれ準備していたら時間が過ぎるのはあっという間だ。

私の好きなところって言ってたけど……楽しみ!

逸る気持ちを抑えて、私は化粧をするためにぐっと髪の毛を結びあげた――。
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