授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
そう説明されているうちに浅草神社の神殿前に着いた。賽銭箱に小銭を入れて黒川さんは神妙な面持ちで目を閉じながらお願いごとをし始め、私も手を合わせて続いて目を閉じる。

黒川さんとずっとずっと一緒にいられますように……。

お父さんに反対されませんように……。

あ、お願いごとって一個だけかな? ふたつとかだめ?

「ずいぶん熱心にお願いごとしてるみたいだな」

「え? は、はい。黒川さんとずっと一緒にいられますようにって……」

あ、こういうのって人に喋っちゃだめなんだっけ?

ついうっかり本音を口にしてしまい、両手で口元を押さえる。

「ほんと、君って嘘つけないタイプだよな」

「そういう黒川さんはなんてお願いしたんですか?」

「秘密だ」

ずるい! でも、私と同じだったらいいな……。 

それから甘味処へ行ったり水上バスに乗ったり、半日だったけれど今日は密度の濃いデートだった。黒川さんは博学で話の引き出しも多い。だから一緒にいてすごく楽しかった。つい子どもみたいにもっともっとと色んな話をねだってしまう。

「夕食どうする? ごめん、バタバタしてて特にレストランの予約入れてないんだ。今日は平日だし、適当に店入っても大丈夫だと思うが……」

ここは最後までエスコートしたかったと、黒川さんがほんの少しバツが悪そうに頬を人差し指でカリッとする。
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