虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない

しばらく頭を抱えていたけれど、こうしてはいられないと衣装部屋に向かった。

とにかく逃げなくちゃ。

豪華なドレスを脱ぎ捨て、一番動きやすそうな黄土色のドレスを身に付けた。

髪の毛はなるべく目立たないようにきっちりと纏める。

ロウみたいに染められたらいいけど、今はその方法も時間もないから仕方がない。

いくらからの現金と宝石を鞄に詰めた。

あっと言う間に用意をしたけれど、ふと正気に戻った。

ここからなんとか脱出できたとしても、その後どうするの?

私は国王暗殺未遂の疑いをかけられているのだから、逃げたとばれたら、ものすごい数の追っ手が来るんじゃない?

浪費の罪でも追放のち暗殺なのだ。それより上の罪とされる今、もっと酷い罰が待っていると考えるべき。

そんな重罪人をランセルが見逃すとは思えない。しつこく探し続けると思う。

いつまでも逃げ続けるなんて私には無理だし、心が病んでしまいそう。

駄目だ。逃げても何も解決しない。

となると私が生き残る道はひとつだけ。国王を襲った真犯人を見つけ出して、疑いを晴らす。
だけど、どうやって?

軟禁状態では調査も出来ない。そもそもランセルがそんな時間を与えてくれるものなのかな。
悩んでいると、扉の向こうから騒々しい足音が聞こえてきた。
< 110 / 178 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop