虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない

「私を疑うならランセル殿下も疑われてもおかしくないと言ってるんです。だって誰よりも先に国王陛下を追い広間を出たのですから。それは多くの貴族が見ていることです。勿論私の実家ベルヴァルト公爵家の皆も」

ほんの少し前までパニックになっていた割に、スラスラ言葉が出て自分でも意外だった。

「俺を脅しているつもりか?」

「まさか。ただ公平に話して欲しいだけです。もう一度質問します。国王陛下が倒れた原因は?」

「……首をしめられ息が出来なくなったと思われる」

「首をしめられた?」

やっぱり病気じゃなかったんだ。でも……。

「それで私が犯人なんておかしくないですか? 仮に私が襲ったとしても、撃退されるでしょう」

詳しくは知らないけど、国王なら護身術の心得くらいはありあそうだもの。

むしろランセルが犯人の確立が上がっている。

そう言えば、国王に叱責されたとか言ってたよね。揉める動機も十分じゃない。

「ランセル殿下は国王陛下と揉めていたのですか?」

「何が言いたい?」

「先ほど叱責されたとおっしゃっていたので、喧嘩になったのかと。それからマリアさんはどうしたんですか?」

恋人の名前を出したからか、ランセルが僅かに肩を揺らした。

マリアさんはランセルにとって弱点に間違いないようだ。
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