虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない

「マリアを夜会に連れ出したことを指摘された。だが彼女に非はない。広場を連れ出したのはひとりで残す訳にはいかないからだ」

国王はランセルとマリアさんの関係を認めてなかったと言うこと?

彼女の身分のせいだろうか。だけどこれで少し見えてきた。

多分ランセルはマリアさんを正妻にしたくて、根回しをしていたのだろう。これまで寄って来る令嬢に見向きもしなかったのはそのせい。

お茶会でユリアーネとの婚約話をしたと激怒したのも、それまでの根回しも虚しく外堀を埋められて行くようでイライラしたのかもしれない。

そんなことも有り、今夜の夜会にマリアさんを連れて来てでダンスを踊った。かなり強引な行動だけれど、それしか回りを黙らせる方法が無かった?

「国王陛下はマリアさんを王太子妃にすることに反対なんですね」

「父上だけでなく宰相を始めほぼ全ての重臣がだ。マリアは愛妾にして高位貴族の令嬢を正妻に迎えろと言っている。そんな中選ばれたのがベルヴァルト公爵家のユリアーネ嬢だ」

ランセルは不快そうにユリアーネの名前を口にした。

別にユリアーネ自身を嫌っているのではないかもしれないけれど、結婚反対勢力の代表のように感じてしまっているのだろうな。

「だいたいの経緯は分かった気がします。だけど今日の態度はよく無かったと思います。国王陛下が怒るのも当然です」

「俺には妃を選ぶ自由も無いと言いたいのか?」

「そうは言っていませんけど。でもあまりに自分たちの気持ちしか考えていないとお思います。ユリアーネと婚約したくないのは結構ですが、婚約出来ないとベルヴァルト公爵家に行って言えば良かったんですよ。あんな大勢の人の前で恥をかかす必要は無かったですよね? ユリアーネは自尊心が傷ついたと思いますよ」

ランセルの顔色が僅かだけれど変わった。少しは罪悪感があるのかな。
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