虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
「あ、そうだわ。マリアさんもお茶会に参加しませんか?」
「え? 私がですか? あの……お誘い頂いたのは嬉しいのですが、場違いではありませんか?」
「そんなことないわ。そのドレスも日中のお茶会に相応しいものだし、 今日来るのは落ち着いている良い人たちばかりだから、話しやすいと思うの」
ユリアーネは来ないし、マリアさんに嫌がらせをする人はいないはず。
夜会とかでいきなり皆の中に入っていくより、少人数のお茶会で知り合いを増やした方が気楽なんじゃないかな。
彼女なら宰相の話を聞くときに邪魔をしたりはしないだろうし。
それにマリアさんを連れて行けば、急に開催したお茶会の理由付けになるかも。
突然三日後に集まってと言われ、戸惑っている人もいるはずだ。
ランセル殿下に頼まれてマリアさんを紹介するって流れにすれば、自然なんじゃないかな。
まあ彼女が嫌がったら無理強いはしないけど。
「では……お邪魔させて頂きます。とても緊張しますけど、私も皆さんとお友達になりたいです」
「良かった。きっと仲良くなれるわ」
マリアさんは遠慮がちがな性格だし、あまりコミュニケーション力が高い方じゃないけど、そんな自分を変えようと頑張っているんだろうな。多分、ランセルとの未来を見据えているから。
本当にランセルは良い恋人を見つけたものだ。
それからしばらく世間話をしていると約束の時間近くになった。
「王妃様、そろそろ時間ですわ」
フランツ夫人に言われ、ソファーから立ち上がる。
「マリアさん、行きましょう」
「はい」
マリアさんは、緊張したように立ち上がる。
私の斜め後ろにマリアさんが続き、その後をフランツ夫人とメラニー、レオナが付く。