虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
ランセルの戴冠式は二月後だそうだ。

マリアさんとの結婚はその一年後を目指している。

私は……ロウとの別れに落ち込んでいたものの、いつまでも沈んでいるのは私らしくないと無理矢理気持ちを立て直した。

今までだってピンチばかりだったじゃない。
今回だって、切り抜けてみせる。

そう決意して、行動を初めていた。

計画はふたつ。

まずはランセルに話を持ち掛け協力をお願いした。

門前払いの勢いで拒否されたけれど、マリアさんにも協力して貰って彼を説き伏せた。

そして、もうひとつの計画は……。

戴冠式の準備で忙しない王宮に、私はベルヴァルト公爵夫妻とリッツ男爵を呼び出した。

彼らにはいつもの応接間ではなく、これまで使ったことのない王妃が謁見する為の広間に通すよう段取りした。

この日の為にメラニーに用意して貰った贅をつくしたドレスを着て、謁見の間に進む。

何か有っては困るのでフランツ夫人もメラニーも連れていかない。

ロウだけが護衛役として付き添ってくれることになった。

黄金のティアラを付け、いざ出撃する。

「そうしていると王妃らしく見えるな」

「最初で最後の王妃役だからね」

私は不敵に笑って気持ちを奮立たせる。

法的に裁けなくても、彼らに自分が罪人だとつきつけてやるのだ。

謁見の間には、不機嫌そうな顔のエルマと不安そうな公爵。それからリッツ男爵がいた。

彼の容姿は夢で見たそのままで、私は小さく息を呑んだ。

あの夢はやっぱり真実だったんだ。

三人から目を逸らし玉座に座った。ロウが背後についてくれる。

私は冷ややかな目で三人見下ろし口を開いた。

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