虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
ランセルに一芝居打って貰って王妃の地位を捨てた私は、以前からの希望の通りバルテルに移住した。
リアリティを出す為にと、本当に粗末な馬車に揺られたのは辛かったけど、盗賊を装ったロウたちが迎えに来てくれてからは快適な旅だった。
魔の森も安心して抜けられたし。
アリーセ・ベルヴァルトではいられなくなった私は、今はリセ・ガーランドと名乗っている。
辺境伯である伯父様とロウと相談した結果、ガーランドさんの家の養女になると決まったのだ。
周りの皆は本当に親切で、快適な生活を送っている。
ガーランドさんは王都にいることが多いけど、時々戻って来て一緒に料理をしてくれるし、本当に幸せ。
「なんか楽しそうだな」
ロウが近づいて来て言う。
「うん。毎日楽しい。ねえ、時間があるならご飯食べていかない?」
「ああ。リセの料理は結構美味いからな」
「じゃあ、お皿並べて」
ロウはせっせと棚からお皿を取り出す。
そんな姿は次期辺境伯様には見えない。
でもロウもそろそろ結婚とかしなくていいのかな。
あれ、そう言えば……。
「ねえ、ロウには婚約者とかいないの?」
素朴な疑問だったけど、ロウはやけに慌てて私を見た。