虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
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なんて可哀そうな女性だろう……私は同情の気持ちでいっぱいになりながら本を閉じた。
だって、アリーセは冤罪だったのだ。
希代の悪女なんて呼ばれてみんなに恐れられていたけど、本当の彼女は不幸な生い立ちの気が小さな弱い女性で、王妃には父親の命令で嫌々なっただけ。
本人は権力欲も物欲もない平凡な女性。王宮でひっそりと暮らしていたところ、罪を被せるのに都合のよい存在だったから陥れられたのだ。
アリーセに問題があったとすれば、悪意に立ち向かう気概がなかったところだけ。
大きな流れに逆らえずに不幸な結末を迎えてしまった。
もし私がアリーセの立場だったら、もっと抵抗したのに。罰は本当の悪人に下るべきだもの。