虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
「あなたは行かなくていいのですか?」

「ええ。家族とは帰る時間になったら合流します」

ローヴァインはアリーセと家族が上手くいっていないことに気付いただろうか。

さっきの話ではあまり社交界に出ないみたいだったから、噂を知らないのだろうけど。

次に再会したとき、彼がどんな態度を取るか気になった。


夜会帰りの馬車はなんとも言えない空気が漂っていた。

ユリアーネのデビューは大成功で、予想通り令嬢の中で一番人気。ダンスの申し込みは誰よりも多かったとか。

ちなみに一番不人気なのがアリーセなのは言うまでもない。

エルマは早くもユリアーネの結婚相手の選別を初めているようで、どこの令息が良いとか駄目だとか公爵に報告している。

でも愛娘のデビューの成功にも、公爵は浮かない表情だった。
エルマの言葉にも上の空で、ユリアーネに対しても笑顔を見せない。

エルマもその様子に気付いたのか、顔を強張らせ始める。

そんな中、公爵が突然私に話しかけた。

「ローヴァイン殿とは何の話をしたんだ?」

「……初対面なので大した話はしていませんが」

「辺境伯殿については?」

もしかして探られている?

「特に話題に上りませんでしたが」

辺境伯を気にしているのは意外だった。これまでの仕打ちから、アリーセの母の実家なんて気にも留めていないのだと思っていたのに。

「お姉様、ローヴァイン様とお知り合いになったのですか?」
< 27 / 178 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop