虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
可哀想なアリーセを思い出しながら歩道橋の階段を渡る。

今日ら朝一で打合せの準備があるから普段より早めに会社に着きたい。

早足で階段を降りようとしたとき、つるりと足元が滑りひやりとした。

昨日雨が降ったから、滑りやすくなってたのかな?

そんなことが頭を過った次の瞬間には体にもの凄い衝撃が。

悲鳴を上げることも出来ずに、体のあらゆるところを打ち付けながら、下へ転がっていき最後は地面に激しく打ち付けられた。

痛いし息が出来ない。手足も首も動かせない。これってかなりの大怪我なんじゃない?

どうしよう……打合せに遅刻したら先輩にもの凄く怒られる。上司にも呆れられて次の賞与の査定に響くかも。欲しいものいっぱいあるのに!


いや、今はそんなこと言ってる場合じゃなかった。
この状況どうすればいいの? 

こんなときに限って誰も通りがからないし、段々と目が霞んでよく見えなくなってきた。

まさか……私、ここで死んじゃうの?

恐怖でパニックになりそうなのに、口からは変なうめき声しか出て来ない。

嫌だ。私はまだやりたいことが沢山あるのに。結婚どころか恋愛だってろくにしていない。これからだと思っていたのに。

狭くなった視界の先にバッグから飛び出したにもつが散乱している。

休憩時間に読もうと持って来たカレンベルク物語も。

続き、読みたかったな……。

意識はどんどん混濁していく。

そのまま暗闇に飲み込まれた。

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