虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
鬱々としながら離れに戻ると、部屋の前にそれまでいなかった兵士がふたり待ち構えていた。

ぎょっとして立ちすくむと、彼らは礼儀正しく頭を下げる。

「え……あの、どうしたんですか?」

こんなところで一体何を?

「公爵閣下のご命令で、本日よりアリーセ様の護衛を務めさせて頂きます」

え、護衛?
なんで急にと思ったけれど、直ぐに気が付いた。

この人たち、護衛と言う名の見張りだ。部屋に入り庭を見遣ると、そこにも兵士の姿があった。

これじゃあ屋敷を抜け出せないじゃない。最悪だ。

ふてくされた私は早々にベッドに入った。

これからどうしよう。せっかくの家出計画がいきなり暗礁に乗り上げてしまった。



翌朝早くに三人の侍女が離れに来た。

今日から私専属の侍女になるそうだ。部屋の外だけでなく中にまで見張りが付いてしまった。

しかも公爵が宣言していた、寝食よりも大事な教育までスタートした。

礼儀作法、ダンス、歴史、地理、貴族の情勢など。

拒否する暇も与えない程の過密スケジュール。

逃げ場のない私は仕方なく授業を受けたけれど、本当に大変だった。

地理や歴史はまだ良かった。学生のとき勉強した要領で覚えれらたから。

でも礼儀作法とダンスは酷かった。あまりの出来の悪さに教師も退いていたもの。

私が神経を擦り減らしている間に、エルマがお嫁入の支度を進めていた。

ちゃんとやるのか疑わしかったけど公爵に言われているのか、順調に進めていた。
そんな風に過ごしている内にあっと言う間に二月が経過。
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