虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
輿入れの日
王宮に行かざるを得ないけど、最後まで諦めないから。

後添えだからか、婚礼の儀式は王家のものとは思えない程ささやかなものだった。

と言うか、結婚式事体が省かれていた。何枚かの書類にサインをしただけで、国王は姿すら見せない。

その後、ごく少数の家臣が見守る中、王妃戴冠式を行った。

ここでも国王は不在で、冠は大司祭から授けられた。

その後、私室に案内された。

私が与えられたのは、王宮内の王族の居住地区の最北に位置する二間続きの部屋だ。

広々とした居間と続きの寝室。国王の私室は反対の南側にあると言う。

偶然顔を合わす確率は低そうだ。

早くも国王に蔑ろにされる王妃の気配が溢れている。

なるべく早い内にこの状況をなんとかしなくては。

立場が弱いままでは、罪を被せようとする者に簡単に陥れられる。

その流れを変えるには、アリーセの立場を強くするしかない。

とは言え、一番いいのは穏便に離婚してもらうこと。

話し合ってその方向に進められないものなのかな。

ただ、今夜の初夜はスルーなんだよね。

その後も会う機会が無いはずなので、国王と話し合うのは難しい。

どうしたものか……。


小説で読んだ通り国王の訪れはないまま、私はひとりきりで朝を迎えた。

天井まで届く大きな窓からは、朝の光が差し込んでいる。
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