虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
キョロキョロと辺りを見回しながら考えていると、ぎしっと軋んだ音を立てて扉が開いた。

やって来たのは黒いワンピースに大きな白いエプロン姿の女性で、どう見てもメイドさんだった。

『あ、あの……』

コスプレなのかな? 少し怪しさも感じたものの、この人が私を助けてくれたのだろう。

とにかくお礼をと口を開きかけた途端、相手の女性が大きな声を出した。

『アリーセ様! 目が覚めたのですね!』

え……アリーセ様って? 

首を傾げていると、コスプレ女性は更にまくし立てる。

『直ぐにお医者様を呼んで来ますね』
『え? お医者様?』
『はい、目覚めたら直ぐに呼ぶように奥様から言われていますから』

まあ派手に階段から落ちて頭も打ってそうだし、医者には見て貰った方がいいよね。

奥様がってことは、この人はコスプレではなく本当にメイドなのかな?

お金持ちの家にはメイドさんが居てもおかしくないだろうけど、本当にこんな格好しているものなんだ。

『アリーセ様、どうかなさいましたか?』
『え?』

この人、さっきも私をアリーセって呼んでなかった?

“理世”を聞き間違えた? いや、二回ともアリーセと言ってたと思うけど……。

『公爵様にもお知らせしないと』

首を傾げていた私は、女性の言葉にますます混乱した。

『あの……公爵って?』

今の日本に公爵なんていないよね? ニックネーム? それとも冗談を言ってる?
< 6 / 178 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop