続・隣人はクールな同期でした。

アイツは花や写真を飾らず
シンプルでシックな色合いの部屋だったが
彼女は全体的に緑の色調で統一されていて
家具や配置・飾り付けなんかも全部違い
女性らしい可愛い感じに仕上がっている。


むしろセツナが男寄りじゃねぇか?と
少し可笑しくも思えてしまう。


人が違うんだから当たり前だって
わかってはいるけど…
面影がない事に
少し複雑な気持ちだ。


「ほら!そこにいるのッ」


キッチンに邪魔させてもらい
彼女が指さす方向に視線を移すと
窓際を移動している小さなクモの姿が…


「…コレ、です?」


まさか…と思いつつ
恐る恐る尋ねると
コクコクと首を縦に振るマリカさん。

どうやら本当に
この小さな虫の事らしい。


そういえばこの人…


「虫、ダメでしたね」


窓の外に逃がしてやりながらそう言うと
またもコクコクと首を縦に振る彼女は
本気で怖いらしく声も出せないようだ。


まったく…


「あいかわらず変わってないな…」


喧嘩の仲裁役に徹するほど度胸があるのに
テントウムシほど小さな虫ですら見る事も出来ない人。

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