続・隣人はクールな同期でした。

暗い空を見上げ
目を閉じて瞑想。


「セツナさん…?」


アタシを呼ぶ声に目を開ければ
少し離れた先に風見くんの姿。


ネイビースーツにブラウンのストライプ柄のネクタイをし
シンプルなデザインのビジネスバッグを持って
正装に畏まっているところを見ると
仕事の外回りだったんだろう。


「あ、風見くん…
 お疲れさま…」


いつもだったら『最悪なヤツに会ったな』とか
絶対に嫌悪を感じて距離を置く相手なのに
今はそれすら思わず
ごく普通に接してしまった。

それほど疲れているからなのか
忌み嫌って拒絶する元気も出ない。


そんなアタシの態度に
彼からも…


「セツナさん…元気なさすぎです。
 目が死んでますよ?」


と、言われてしまう。


「…平気。
 ちょっと考え事をしてただけだから…」


『悪かったね、死んだ魚の眼をしていて』
なんて、嫌味の1つも言えたらいいのに
それを言葉にするのも億劫だ。


「何かあったのなら
 俺が話を聞きますよ!」


そう言って
躊躇なくアタシの横に座る彼。

このコの優しさは
“下心”なんだろうな。
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