続・隣人はクールな同期でした。

後ろからもの凄いスピードで走ってきた自転車は
端に寄ったアタシのギリギリ隣を通過していく。
と、同時に。
左肩に掛けていたバッグを掴まれ
スピードに乗ったまま思い切り引っ張られてしまったのだ。


えッ…―――


あまりに一瞬の出来事で
何が起きたのか把握する前に
勢いよく引っ張られたせいで前のめりに体制を崩し
そのまま地面にダイブ。


けれどそんな事よりも…


「アタシの鞄ッ」


すでに自転車の人物は走り去っていて
その姿もバッグも見当たらない。

ひったくりに遭ったのは一目瞭然だった。


「どうしよッ」


慌てて起き上がろうとすると
左肩に走る激痛に顔が歪む。


「…ッ痛」


肩以外にも
ハイヒールで転んだせいで足首も捻ってしまい
ストッキングは破れて膝から出血まで。


「最悪…」


白昼堂々の犯行と
『まさか自分が』って
油断したせいで招いた結果だが
バッグを盗まれた事に青ざめてしまった。


「スマホも財布も…薬もあの中だ…」


中身を思い出すと
どれも全部
人手に渡っちゃいけないモノだとわかり
更に焦りが増す。


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