【短】俺でいっぱいになればいいのに
俺から事の顛末を、聞いた君が顔を歪めた。


「え、遼太先輩置いていったんですか?あんのやろ、あとで、怒っときますね!」


幼馴染なだけあって、普通の先輩後輩よりも、普通の男女よりも、距離感が近い。

それが、とても羨ましかった。

俺には、どうしようにも壊せない壁だった。


「ううん、別にいいんだよ。それに、君にも会えたし」


でも、俺は知っている。

君達が恋仲に発展することは、相当難しいのを、いままで“見てきたから”わかってる。

君が、それってどういう意味ですか。と、どぎまぎした。

それが、可愛くて嬉しかった。

君に俺のことを、考えて欲しかった。

「そのまま意味だよ」

ゆっくりと、いとおしい君への言葉を紡ぐ。

けれど、いつだって俺の心に余裕はなかった。

君は、まだ君の感情に気がついていないだけ。

君は、アイツが好きなんだ。

君は、大和が好きなんだ。

いつも、見てるから分かってるよ。

君の顔が、身体が、物語っているんだ。

< 3 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop