男女7人!?夏物語~アイドルHinataの恋愛事情【3】~
09 本日、臨時休業。
そして、また一週間くらい経った。
朝、目が覚めると、頭と身体中が痛い。
「樋口くん、大丈夫?」
布団からなかなか起きださない俺に、中川が声をかけた。
「ん……あぁ、平気……」
「全然平気じゃなさそうだけど。今日は、休む?」
「……いや、大丈夫……」
「あんまり無理すると後々きついよ。希さぁーん」
中川は、希の寝室に向かって叫んだ。
「なに? どうしたの?」
部屋から出てきた希に、中川が状況を説明した。
「樋口くんが、ちょっと体調が悪いみたいなんだ。今日は、少し休ませてやってもいい?」
「あぁ、こっち来てから休みなしだったからね。さすがにちょっとハードだったかな? 昨日のレコーディングも、意外と音程はしっかりしてたって報告受けてるし。今日は休んで、明日仕上げてもイイんじゃナイ?」
『意外と』ってなんだよ。
「じゃぁ、今日は3人とも休みね。高橋は、大阪行ってきてイイよ。いろいろと整理したいコトもあるでしょ? 明日の昼までに戻ってきてくれればイイから」
高橋は、少しうれしそうな笑顔でうなずいた。
やっぱり、親元離れて一人で東京に来てるのは、寂しかったんだろうな。
「中川は、どーする? 長野行ってくる?」
「ボクはいいよ。長野まで帰るの時間かかって面倒だし、整理することなら、上京するときに全部済ませてきたし。今日はこっちの友達に会ってくるよ」
「友達って、カノジョ?」
「……違うよ。彼女なんていないよ」
「ふぅん……。あ、樋口にもいずれ、ちゃんと静岡に戻る機会を作るからね。ガッコーのコトとか、考えないと……」
そこまで言うと希は、布団に沈み込んでいる俺の顔を覗き込んで、
「……ま、今はそんなコト考えられる状況にナイか。医務室のセンセー呼んでおくから、ちゃんと診てもらっておいてね」
それからすぐに『医務室のセンセー』に診てもらって。
何種類かの薬を飲まされて。
中川と高橋が出掛けるのを布団の中から見送った後。
すっかりしっかり、眠っちまった。
昼過ぎに、ふと目が覚めた。
やけに、静かだな……って、そうか。
中川も高橋も、出掛けちまったんだったな。
希は……何をしてんだろう。
「…………………………?」
微かだけど、どこかから声が聞こえる。
――――女の声?
奈々子ちゃんは、もう大阪に帰っちまったし。
事務所のスタッフ?
希と話をしてるみてーだな。
「……薬飲んで、眠ってるんだ。起こさナイであげてよ」
「この部屋にいるってことは、例の新しいグループのコ?」
「そーなんだ。樋口っていうの」
「へぇー。どこからさらってきたの?」
「ナンだよ、みんなして、『さらってきた』とか『拉致ってきた』とか……ボク、犯罪者?」
ふふふっと、二人は楽しげに小さく笑う。
「静岡から連れてきたんだ。高校3年だって」
「高3? じゃぁ、わたしと変わらないじゃない」
「……いくつサバ読む気? もう22でしょう?」
「まだ21よ。22になるのは、明日よ、あ・し・た」
「21も22も、変わらナイでしょ」
「どっちにしても、高橋くんや中川くんより、歳が近いってことには変わりないでしょ?」
「……ゴメンネ、こんなに年下で」
「あ、もしかして、ヤキモチ? 希が、ヤキモチ? 珍しいこともあるのね。明日は雪でも降るんじゃない?」
「もう、イイでしょ? 貴重な時間ナンだ。いまはちゃんと……ボクのこと、見ててよ」
……会話が途切れた。
部屋から出ていった感じはしない。
起きるに起きれねーな。
会話の内容からして、希が女連れ込んでるってことだろ?
気配から察するに……なんか『いい雰囲気』なんだろ?
なんだよ、希に彼女がいたってことかよ。
しかも、21だか22の。
……って、待てよ?
希って、確か、中1だろ?
高橋の妹の奈々子ちゃんより、たったひとつ上なだけの、ガキだろ?
それが、俺よりもっと年上の……彼女!?
チクショー、どんな女だよ?
見てぇ……。すっげぇぇ気になるっ!
……カチャン、と、ドアの閉まる音。
希の寝室の方に行ったみてーだな。
俺は、ゆっくりとドアの方に視線を向けた。
……いない。
確認して、身体を起こした。
希のヤツ……中坊のくせに。
自分の『寝室』に年上の『女』連れ込んで、『ナニ』しようってんだよ?
……まぁ、アイツかなり美少年だし、なんてったって『社長の息子』だしな。
おそらく、かなりモテるんだろーな。
俺なんか、失恋したばっかりだってーのによ。
……あぁ、そうだ、失恋したんだったな。
すっかり、忘れてたな。
2年も片思いしてたってのに。
もう、どーでもよくなっちまったな。
これも、希のおかげかも…………。
――――ガチャッ!!
突然、希の寝室のドアが開いて、女が出てきた。
かなり細身で背が高く、髪の長い……『大人な女』の雰囲気漂う、女だ。
「……あら、起きてたの?」
女は、俺が起きていることに気づいても動揺することもなく言った。
…………ん?
この女……どこかで見た覚えが……。
「遥子、言い忘れたんだケド……」
希が続けて寝室から出てきた。
俺が起きているのに気づいて、少し驚いている。
……でも、こっちも動揺してるってわけでもねーようだな。
「樋口、起きてたんだ。騒がしかった?」
「……あ、いや、別に……」
おまえらが寝室に行っちまってからはナニも聞こえなかったぞ。
っつーか、出てくるの、早過ぎねーか。
「ちょうど良かった。紹介しとくよ。……って言っても、見たコトあるよね?」
と、希は女の肩に手を置いた。
女は、ニコッと笑う。
……………………ん?
…………!! おおおっ!?
「――あっ! 片桐……ヨーコ!?」
希と初めて出会って定食屋でメシ食ってるときに、希が真剣なまなざしで見つめていた、お昼のテレビ番組に出演していたトップアイドル。
『片桐ヨーコ』だ。
「そーだよ。もう22になるってのに、アイドルを名乗ってるオバサンだよ」
「ひどいわね。最近はアイドルも変わってきてるのよ。あなたの事務所のコだって、30近くなってもアイドル名乗ってるじゃない」
「オトコとオンナとじゃ違うんだよ。オンナがアイドルを名乗れるのはハタチまでだよ」
「そういうのを、男尊女卑って言うのよ。だいたいね、わたしが自分で『アイドルでぇす』なんて言ってるわけじゃないのよ。周りが、そう言ってるだけよ」
なんか、話の内容は言い争ってるみてーだけど、二人とも楽しそうだな。
会話してるのが、楽しくってしょうがないって感じ。
「まぁ、そーいうわけで、こんなオバサンだけど」
「『オバサン』じゃないわよ。まだ『お姉さん』よ」
「……とにかく、一応、ボクのカノジョだから。今は触らないでよ」
……『今は触らないで』?
じゃぁ、今じゃなけりゃ触ってもいいのか?
って、違うか。
『付き合ってる間はボクのものだから触るな』っつー意味か。
まだ頭がぼんやりしてんのかな。まともな思考ができねぇ。
ふと、片桐 ヨーコは、何かを思い出したように、希に聞いた。
「……で、希、言い忘れたことって、何?」
「あ、そーだった。明日、結果が出るんだ。だから……」
「やだ、そんな大事なこと、言い忘れてたの? その話のために呼んだんじゃないの?」
「そーナンだけど……、忘れてた」
「まぁ、やっと自分の作ったグループが動き始めたんだものね。仕方ないわよね」
片桐 ヨーコは、歳の離れた弟をかわいがるように、希の頭をなでた。
「だぁぁぁい丈夫よっ。何年、希の彼女やってきたと思ってるの? 心の準備くらい、とっくの昔に出来てるわよっ。もう、毎回毎回、同じこと何度も言わせないでよね」
そう言うと、片桐 ヨーコは笑顔のまま、部屋を出ていった。
「驚いた?」
希は、ニッと笑って俺に聞いた。
「……そりゃぁ、驚くだろ。あんなトップアイドルが彼女なんてよ。しかも、歳いくつ離れてんだよ?」
「9コ」
「いったい、どこで出会ったんだよ? 仕事でか?」
「そんな昔の話、忘れたね。もう何年前だったかも思い出せナイし」
希はそう言って、遠くを見つめた。
出会ったころのことでも思い出してんのかな。
「なぁ、ひとつ、聞いていいか?」
「うん。何?」
「さっき、片桐ヨーコと話してたときに言ってた、『結果』ってなんだよ?」
「あぁ、あれ。……ちょっとね、最近体調が良くナイから検査したんだ。どーせ、たいしたことナイと思うケド」
……本当に、そうか?
二人とも、口調はすげー楽しそうだったけど。
でも、『心の準備』とか、『毎回毎回』とか。
なんか、本当はもっと深刻な病気なんじゃねーのか?
「ところで樋口、具合はどう?」
「ん? あぁ、なんかだいぶ、良くなったぞ」
「そーか、よかった。じゃぁ、今朝話してた、キミのガッコーのことナンだけど」
「あぁ」
「どーしようか。ボクが通ってるガッコーの高等部に編入してもいいケド……。あと2、3学期だけナンだよね。デビューして落ち着いたら、静岡のガッコーで補習でも受けて卒業させてもらうってのが、一番妥当だと思うんだケド」
「そういえば中川も、そんなようなこと言ってたな。そんなこと、可能なのか?」
「交渉次第だね。樋口のガッコーって、見たトコ私立でしょう? 公立よりは、融通きくと思うケド」
「そういう……もんか?」
「まぁ、ナンとかなるよ」
不気味なくらい、さわやかな笑顔。
……まさか、ウラで何か非合法な手段でも使う気じゃねーだろうな。
朝、目が覚めると、頭と身体中が痛い。
「樋口くん、大丈夫?」
布団からなかなか起きださない俺に、中川が声をかけた。
「ん……あぁ、平気……」
「全然平気じゃなさそうだけど。今日は、休む?」
「……いや、大丈夫……」
「あんまり無理すると後々きついよ。希さぁーん」
中川は、希の寝室に向かって叫んだ。
「なに? どうしたの?」
部屋から出てきた希に、中川が状況を説明した。
「樋口くんが、ちょっと体調が悪いみたいなんだ。今日は、少し休ませてやってもいい?」
「あぁ、こっち来てから休みなしだったからね。さすがにちょっとハードだったかな? 昨日のレコーディングも、意外と音程はしっかりしてたって報告受けてるし。今日は休んで、明日仕上げてもイイんじゃナイ?」
『意外と』ってなんだよ。
「じゃぁ、今日は3人とも休みね。高橋は、大阪行ってきてイイよ。いろいろと整理したいコトもあるでしょ? 明日の昼までに戻ってきてくれればイイから」
高橋は、少しうれしそうな笑顔でうなずいた。
やっぱり、親元離れて一人で東京に来てるのは、寂しかったんだろうな。
「中川は、どーする? 長野行ってくる?」
「ボクはいいよ。長野まで帰るの時間かかって面倒だし、整理することなら、上京するときに全部済ませてきたし。今日はこっちの友達に会ってくるよ」
「友達って、カノジョ?」
「……違うよ。彼女なんていないよ」
「ふぅん……。あ、樋口にもいずれ、ちゃんと静岡に戻る機会を作るからね。ガッコーのコトとか、考えないと……」
そこまで言うと希は、布団に沈み込んでいる俺の顔を覗き込んで、
「……ま、今はそんなコト考えられる状況にナイか。医務室のセンセー呼んでおくから、ちゃんと診てもらっておいてね」
それからすぐに『医務室のセンセー』に診てもらって。
何種類かの薬を飲まされて。
中川と高橋が出掛けるのを布団の中から見送った後。
すっかりしっかり、眠っちまった。
昼過ぎに、ふと目が覚めた。
やけに、静かだな……って、そうか。
中川も高橋も、出掛けちまったんだったな。
希は……何をしてんだろう。
「…………………………?」
微かだけど、どこかから声が聞こえる。
――――女の声?
奈々子ちゃんは、もう大阪に帰っちまったし。
事務所のスタッフ?
希と話をしてるみてーだな。
「……薬飲んで、眠ってるんだ。起こさナイであげてよ」
「この部屋にいるってことは、例の新しいグループのコ?」
「そーなんだ。樋口っていうの」
「へぇー。どこからさらってきたの?」
「ナンだよ、みんなして、『さらってきた』とか『拉致ってきた』とか……ボク、犯罪者?」
ふふふっと、二人は楽しげに小さく笑う。
「静岡から連れてきたんだ。高校3年だって」
「高3? じゃぁ、わたしと変わらないじゃない」
「……いくつサバ読む気? もう22でしょう?」
「まだ21よ。22になるのは、明日よ、あ・し・た」
「21も22も、変わらナイでしょ」
「どっちにしても、高橋くんや中川くんより、歳が近いってことには変わりないでしょ?」
「……ゴメンネ、こんなに年下で」
「あ、もしかして、ヤキモチ? 希が、ヤキモチ? 珍しいこともあるのね。明日は雪でも降るんじゃない?」
「もう、イイでしょ? 貴重な時間ナンだ。いまはちゃんと……ボクのこと、見ててよ」
……会話が途切れた。
部屋から出ていった感じはしない。
起きるに起きれねーな。
会話の内容からして、希が女連れ込んでるってことだろ?
気配から察するに……なんか『いい雰囲気』なんだろ?
なんだよ、希に彼女がいたってことかよ。
しかも、21だか22の。
……って、待てよ?
希って、確か、中1だろ?
高橋の妹の奈々子ちゃんより、たったひとつ上なだけの、ガキだろ?
それが、俺よりもっと年上の……彼女!?
チクショー、どんな女だよ?
見てぇ……。すっげぇぇ気になるっ!
……カチャン、と、ドアの閉まる音。
希の寝室の方に行ったみてーだな。
俺は、ゆっくりとドアの方に視線を向けた。
……いない。
確認して、身体を起こした。
希のヤツ……中坊のくせに。
自分の『寝室』に年上の『女』連れ込んで、『ナニ』しようってんだよ?
……まぁ、アイツかなり美少年だし、なんてったって『社長の息子』だしな。
おそらく、かなりモテるんだろーな。
俺なんか、失恋したばっかりだってーのによ。
……あぁ、そうだ、失恋したんだったな。
すっかり、忘れてたな。
2年も片思いしてたってのに。
もう、どーでもよくなっちまったな。
これも、希のおかげかも…………。
――――ガチャッ!!
突然、希の寝室のドアが開いて、女が出てきた。
かなり細身で背が高く、髪の長い……『大人な女』の雰囲気漂う、女だ。
「……あら、起きてたの?」
女は、俺が起きていることに気づいても動揺することもなく言った。
…………ん?
この女……どこかで見た覚えが……。
「遥子、言い忘れたんだケド……」
希が続けて寝室から出てきた。
俺が起きているのに気づいて、少し驚いている。
……でも、こっちも動揺してるってわけでもねーようだな。
「樋口、起きてたんだ。騒がしかった?」
「……あ、いや、別に……」
おまえらが寝室に行っちまってからはナニも聞こえなかったぞ。
っつーか、出てくるの、早過ぎねーか。
「ちょうど良かった。紹介しとくよ。……って言っても、見たコトあるよね?」
と、希は女の肩に手を置いた。
女は、ニコッと笑う。
……………………ん?
…………!! おおおっ!?
「――あっ! 片桐……ヨーコ!?」
希と初めて出会って定食屋でメシ食ってるときに、希が真剣なまなざしで見つめていた、お昼のテレビ番組に出演していたトップアイドル。
『片桐ヨーコ』だ。
「そーだよ。もう22になるってのに、アイドルを名乗ってるオバサンだよ」
「ひどいわね。最近はアイドルも変わってきてるのよ。あなたの事務所のコだって、30近くなってもアイドル名乗ってるじゃない」
「オトコとオンナとじゃ違うんだよ。オンナがアイドルを名乗れるのはハタチまでだよ」
「そういうのを、男尊女卑って言うのよ。だいたいね、わたしが自分で『アイドルでぇす』なんて言ってるわけじゃないのよ。周りが、そう言ってるだけよ」
なんか、話の内容は言い争ってるみてーだけど、二人とも楽しそうだな。
会話してるのが、楽しくってしょうがないって感じ。
「まぁ、そーいうわけで、こんなオバサンだけど」
「『オバサン』じゃないわよ。まだ『お姉さん』よ」
「……とにかく、一応、ボクのカノジョだから。今は触らないでよ」
……『今は触らないで』?
じゃぁ、今じゃなけりゃ触ってもいいのか?
って、違うか。
『付き合ってる間はボクのものだから触るな』っつー意味か。
まだ頭がぼんやりしてんのかな。まともな思考ができねぇ。
ふと、片桐 ヨーコは、何かを思い出したように、希に聞いた。
「……で、希、言い忘れたことって、何?」
「あ、そーだった。明日、結果が出るんだ。だから……」
「やだ、そんな大事なこと、言い忘れてたの? その話のために呼んだんじゃないの?」
「そーナンだけど……、忘れてた」
「まぁ、やっと自分の作ったグループが動き始めたんだものね。仕方ないわよね」
片桐 ヨーコは、歳の離れた弟をかわいがるように、希の頭をなでた。
「だぁぁぁい丈夫よっ。何年、希の彼女やってきたと思ってるの? 心の準備くらい、とっくの昔に出来てるわよっ。もう、毎回毎回、同じこと何度も言わせないでよね」
そう言うと、片桐 ヨーコは笑顔のまま、部屋を出ていった。
「驚いた?」
希は、ニッと笑って俺に聞いた。
「……そりゃぁ、驚くだろ。あんなトップアイドルが彼女なんてよ。しかも、歳いくつ離れてんだよ?」
「9コ」
「いったい、どこで出会ったんだよ? 仕事でか?」
「そんな昔の話、忘れたね。もう何年前だったかも思い出せナイし」
希はそう言って、遠くを見つめた。
出会ったころのことでも思い出してんのかな。
「なぁ、ひとつ、聞いていいか?」
「うん。何?」
「さっき、片桐ヨーコと話してたときに言ってた、『結果』ってなんだよ?」
「あぁ、あれ。……ちょっとね、最近体調が良くナイから検査したんだ。どーせ、たいしたことナイと思うケド」
……本当に、そうか?
二人とも、口調はすげー楽しそうだったけど。
でも、『心の準備』とか、『毎回毎回』とか。
なんか、本当はもっと深刻な病気なんじゃねーのか?
「ところで樋口、具合はどう?」
「ん? あぁ、なんかだいぶ、良くなったぞ」
「そーか、よかった。じゃぁ、今朝話してた、キミのガッコーのことナンだけど」
「あぁ」
「どーしようか。ボクが通ってるガッコーの高等部に編入してもいいケド……。あと2、3学期だけナンだよね。デビューして落ち着いたら、静岡のガッコーで補習でも受けて卒業させてもらうってのが、一番妥当だと思うんだケド」
「そういえば中川も、そんなようなこと言ってたな。そんなこと、可能なのか?」
「交渉次第だね。樋口のガッコーって、見たトコ私立でしょう? 公立よりは、融通きくと思うケド」
「そういう……もんか?」
「まぁ、ナンとかなるよ」
不気味なくらい、さわやかな笑顔。
……まさか、ウラで何か非合法な手段でも使う気じゃねーだろうな。