男女7人!?夏物語~アイドルHinataの恋愛事情【3】~
12 夏休みには『宿題』というものがあってだな。
「……あ、そーだ。思い出した。樋口に大事な話があるんだ」
「俺に?」
希はうなずいて、俺に向き直って言った。
「キミのガッコーのことナンだけど、うまいこと話はついたから」
「……話?」
「うん。デビュー後落ち着いたら、補習受けさせてもらって、ちゃんと卒業できるようにって。具体的な日程は事務所がガッコーと連絡とって調整するから、キミは何も考えなくてイイよ」
「マ、マジでか? うちのガッコー、こういう芸能活動やなんかにちょっと厳しいんだぞ? どんな手使ったんだ?」
「うん? ……まぁ、あの手この手で」
希は、不気味な笑みを浮かべた。
…………怖くてコレ以上聞けねーっつーの。
「……で、ガッコーからの条件がひとつあって、『夏休みの宿題をすべて終わらせて、始業式には出席するように』って」
「宿題!? そんなもん、家に置きっぱなしだぞ? やってあるわけねーだろ?」
「そーだろうと思って、キミの家に連絡して、勉強に関するもの一式を東京に送ってもらうように手配したから。連絡したのは一昨日だから、今日には届くんじゃナイ?」
「っつっても、始業式まであと1週間だぞ? 数学と英語は問題集丸々一冊だし、世界史もプリントが20枚近くあるんだぞ? できるわけねーだろ?」
「大変なのは、その数学と英語と世界史だけ?」
「あ? あぁ、そうだな。他は割と少なかったと思うけど……」
「なら、大丈夫だよ。ボクら手伝うよ。……中川も高橋も、いいよね?」
希が問い掛けると、二人はうなずいた。
「……ちょっと待て。いくらうちのガッコーがレベル高くねーって言ってもよ、俺は高3だぞ? こんなかで一番年上だぞ? おまえらがまだ習ってないようなこと――」
「まぁまぁまぁ……樋口くん。どのみち一人じゃ無理っていうんだったらさ、ボクらを頼ってみてよ。どこまで力になれるか、分からないけどさ」
中川は、俺の肩をたたいた。
高橋は、腕組みをしてうなずいている。
……いや、頼れるものなら頼りてーけどよ?
こいつら、俺をおちょくってんのか?
東京に戻った俺達を待っていたのは、ひとつの大きな段ボール箱だった。
「あぁ、届いてたんだね」
そう言うと、希は段ボールを封してあるガムテープを引きはがした。
中から出てきたのは……、もちろん、俺の教科書やらノートやら、勉強に関するもの一式だ。
「あれ、おかしいな。成績表も一緒に送ってもらうように、お願いしたんだケド」
「成績表なら、俺が持ってるぞ。終業式でもらったからな」
「あ、そーか。じゃぁ、ちょっと見せてくれる?」
「……なんでだよ?」
「イイから、見せてよ。手伝うのに、必要ナンだよ」
……なんで宿題手伝うのに、俺の成績を知る必要があるんだよ?
と思ったが、しぶしぶカバンから成績表を出して、希に手渡した。
「…………ナンて言うか、平凡だね」
希の言葉に、中川と高橋が、俺の成績表を覗き込む。
「見事なまでにばらつきがないね。どの教科もまんべんなく、普通」
「うわ、ホンマや。……僕と正反対や」
……うっせーな。悪ぃかよ。
「……ま、とりあえず始めよーか。ボクは、コレね」
と、希は英語の問題集を手に取った。
「僕は、これ」
高橋が手にしたのは、数学。
「……あれ? 何か間に挟まってる……」
既に世界史のプリントの束を手にしていた中川は、その束に挟まっていた何かをそこから引き抜いた。
「……写真? わ、すごいかわいいじゃん」
「ぬぁっ!? 写真!? ちょっ……貸せっ!!」
俺は、中川の手からその『写真』を奪い取った。
終業式の2、3日前から見当たらないと思ったら……こんなところにっ。
「もしかして、その女の子にフラれたの?」
「……あ、このコ、樋口に蹴り入れてたコだ」
希が俺の後ろから写真を覗き込んだ。
「見るなっ!! ……っつーか、言うなっ!!」
「……蹴り!? こんなかわいい子が!?」
「いやー、見事なフラれっぷりだったよ。ボクが今まで見た中でも、サイコーだったね」
希がニヤニヤ笑っている。
フラれっぷりを褒められてもうれしくないっつーの。
……って、褒められてるんじゃなく、けなされてんのか。
俺は、三人から少し離れたところで写真に視線を落とした。
高校2年の秋、修学旅行の時の写真だ。
写真の中の彼女は、楽しそうに笑っている。
俺が最後に見た彼女は……泣いてたな。
……いや、違うな。怒ってたんだっけか。
美里……今頃どうしてんだろーな。
あいつ、俺と違って友達も多いし。
自分が失恋したことも、俺のことフッたことも……忘れちまってるかもしれねーな。
もう、一か月も経つんだ。
新しい恋なんかしてたって、不思議じゃねーよな……。
「…………って、なんだよ?」
気づくと、3人がニヤニヤしながら俺を見ていた。
「いや、別にぃ……」
3人は、お茶を飲んだり、布団を敷いたりし始めた。
「……おい、宿題手伝ってくれるんじゃねーのか? やっぱり高校の勉強は難しくて諦めたか?」
「いや、諦めてナイよ。今日はもう遅いし、明日でもイイかな、と思って」
希が、英語の問題集で自分の肩を叩きながら言った。
……なんだよ、余裕だな?
「俺に?」
希はうなずいて、俺に向き直って言った。
「キミのガッコーのことナンだけど、うまいこと話はついたから」
「……話?」
「うん。デビュー後落ち着いたら、補習受けさせてもらって、ちゃんと卒業できるようにって。具体的な日程は事務所がガッコーと連絡とって調整するから、キミは何も考えなくてイイよ」
「マ、マジでか? うちのガッコー、こういう芸能活動やなんかにちょっと厳しいんだぞ? どんな手使ったんだ?」
「うん? ……まぁ、あの手この手で」
希は、不気味な笑みを浮かべた。
…………怖くてコレ以上聞けねーっつーの。
「……で、ガッコーからの条件がひとつあって、『夏休みの宿題をすべて終わらせて、始業式には出席するように』って」
「宿題!? そんなもん、家に置きっぱなしだぞ? やってあるわけねーだろ?」
「そーだろうと思って、キミの家に連絡して、勉強に関するもの一式を東京に送ってもらうように手配したから。連絡したのは一昨日だから、今日には届くんじゃナイ?」
「っつっても、始業式まであと1週間だぞ? 数学と英語は問題集丸々一冊だし、世界史もプリントが20枚近くあるんだぞ? できるわけねーだろ?」
「大変なのは、その数学と英語と世界史だけ?」
「あ? あぁ、そうだな。他は割と少なかったと思うけど……」
「なら、大丈夫だよ。ボクら手伝うよ。……中川も高橋も、いいよね?」
希が問い掛けると、二人はうなずいた。
「……ちょっと待て。いくらうちのガッコーがレベル高くねーって言ってもよ、俺は高3だぞ? こんなかで一番年上だぞ? おまえらがまだ習ってないようなこと――」
「まぁまぁまぁ……樋口くん。どのみち一人じゃ無理っていうんだったらさ、ボクらを頼ってみてよ。どこまで力になれるか、分からないけどさ」
中川は、俺の肩をたたいた。
高橋は、腕組みをしてうなずいている。
……いや、頼れるものなら頼りてーけどよ?
こいつら、俺をおちょくってんのか?
東京に戻った俺達を待っていたのは、ひとつの大きな段ボール箱だった。
「あぁ、届いてたんだね」
そう言うと、希は段ボールを封してあるガムテープを引きはがした。
中から出てきたのは……、もちろん、俺の教科書やらノートやら、勉強に関するもの一式だ。
「あれ、おかしいな。成績表も一緒に送ってもらうように、お願いしたんだケド」
「成績表なら、俺が持ってるぞ。終業式でもらったからな」
「あ、そーか。じゃぁ、ちょっと見せてくれる?」
「……なんでだよ?」
「イイから、見せてよ。手伝うのに、必要ナンだよ」
……なんで宿題手伝うのに、俺の成績を知る必要があるんだよ?
と思ったが、しぶしぶカバンから成績表を出して、希に手渡した。
「…………ナンて言うか、平凡だね」
希の言葉に、中川と高橋が、俺の成績表を覗き込む。
「見事なまでにばらつきがないね。どの教科もまんべんなく、普通」
「うわ、ホンマや。……僕と正反対や」
……うっせーな。悪ぃかよ。
「……ま、とりあえず始めよーか。ボクは、コレね」
と、希は英語の問題集を手に取った。
「僕は、これ」
高橋が手にしたのは、数学。
「……あれ? 何か間に挟まってる……」
既に世界史のプリントの束を手にしていた中川は、その束に挟まっていた何かをそこから引き抜いた。
「……写真? わ、すごいかわいいじゃん」
「ぬぁっ!? 写真!? ちょっ……貸せっ!!」
俺は、中川の手からその『写真』を奪い取った。
終業式の2、3日前から見当たらないと思ったら……こんなところにっ。
「もしかして、その女の子にフラれたの?」
「……あ、このコ、樋口に蹴り入れてたコだ」
希が俺の後ろから写真を覗き込んだ。
「見るなっ!! ……っつーか、言うなっ!!」
「……蹴り!? こんなかわいい子が!?」
「いやー、見事なフラれっぷりだったよ。ボクが今まで見た中でも、サイコーだったね」
希がニヤニヤ笑っている。
フラれっぷりを褒められてもうれしくないっつーの。
……って、褒められてるんじゃなく、けなされてんのか。
俺は、三人から少し離れたところで写真に視線を落とした。
高校2年の秋、修学旅行の時の写真だ。
写真の中の彼女は、楽しそうに笑っている。
俺が最後に見た彼女は……泣いてたな。
……いや、違うな。怒ってたんだっけか。
美里……今頃どうしてんだろーな。
あいつ、俺と違って友達も多いし。
自分が失恋したことも、俺のことフッたことも……忘れちまってるかもしれねーな。
もう、一か月も経つんだ。
新しい恋なんかしてたって、不思議じゃねーよな……。
「…………って、なんだよ?」
気づくと、3人がニヤニヤしながら俺を見ていた。
「いや、別にぃ……」
3人は、お茶を飲んだり、布団を敷いたりし始めた。
「……おい、宿題手伝ってくれるんじゃねーのか? やっぱり高校の勉強は難しくて諦めたか?」
「いや、諦めてナイよ。今日はもう遅いし、明日でもイイかな、と思って」
希が、英語の問題集で自分の肩を叩きながら言った。
……なんだよ、余裕だな?