男女7人!?夏物語~アイドルHinataの恋愛事情【3】~
01 フラれた彼女に告ったらフラれたんだが。
「あんな男のことなんか、俺が忘れさせてやるよ」
そう言って、俺は失恋直後の彼女を抱きしめようとした。
彼女は、俺が2年前から片思いしてきた相手だ。
俺が片思いを始めた頃から、彼女は別の男に思いを寄せていて。
ついさっき、ほんの3分前に、俺の目の前で彼女はその男にフラれた。
そんな彼女のことを、黙って見ていられなくなって。
気づいたら、彼女の腕を掴んで、自分の方へと引き寄せ……。
――――ドゴッ!!
「…………いっ……てぇぇ!」
みぞおちに激痛が走った。
目の前に、彼女の……靴底の裏。
…………ってことは、いま俺が食らったのは、蹴り!?
「っざけんじゃないわよ!冗談やめて!」
驚いて、腹を抱えたまま彼女の顔を見上げた。
――――うわっ、マジで怒ってる!?
「あんたなんてね、問題外よ! あんたに忘れさせてもらうくらいなら、その辺の野良犬になぐさめてもらったほうがマシよ!」
そんな捨てゼリフを残して、彼女は去っていった。
……そりゃぁさ。
最初っから、上手くいくなんて、思ってねーよ。
ひっぱたかれるかな、ぐらいには思ってたけど、それで俺の存在に気づいてくれるんだったら、それくらいどーってことねーって思って。
甘かった。
もっと慎重にいけばよかった。
いや、でも……。
それでも、どーせ結果は同じか。
あぁ、さようなら、俺の2年間――――。
「あーあ。これまた、派手にフラれたね、かわいそーに」
背後から、聞き覚えのない声がした。
少し低めの女の声。
なんだよ、見られてたのかよ、カッコわりーな。
……でも、これが『新たな出会い』ってこともある。
「じゃぁ、あんたが俺のことなぐさめてくれるの……か……」
振り返りながら言うと、そこに立っていたのは。
「あ……、え? おと……こ?」
膝丈のパンツのポケットに手を突っ込んで、俺のことを見ていたのは。
少しオレンジがかった茶髪に。
白く透き通るような肌の色の、細い手足。
そして、吸い込まれそうになるくらい澄んだ瞳の。
小柄だけど、なかなかの美少年。
そう、少年。
つまり、男……のコ。
「そーだよ、オトコだよ。声だけ聞いて、オンナだと思った?」
少年は、ニッと笑った。
……なんか、ちょっとムカツク。
「っつーか、おまえ、いくつだよ? 見たとこ、小学生じゃねーのか? なんでこんなとこにいんだよ?」
ここは、俺の通う高校の校舎裏。
この場所に入れるのは、このガッコーの生徒と先生。
つまり、15歳以上の、男女。
背後から聞こえてきた少年の声を、少し低めの女の声と勘違いしたって、不思議なことじゃない。
「ボク? 13だよ。中学1年」
「なんだよ。中1だったら、小学生と変わりねーじゃねぇか。なんで、このガッコーのこんな校舎裏にいんだよ。迷子か?」
「別に、イイじゃん、どーだって」
「いーわけねーだろ。迷子なら、連れてってやるよ。用があるのは、にーちゃんか? ねーちゃんか? 何年の何組――」
少年は、俺がそいつの手首を掴もうとしたのを軽くはたいた。
「迷子じゃないよ。ソコから入ってきたんだ」
そう言って、少年が指差したのは、穴の開いたフェンス。
「……なんでこんなところに穴が? さっき開いてなかったぞ?」
すると、少年が俺の肩をつついて、振り向いた俺に開いたリュックの中身を見せた。
中には、数種類の工具が入っている。
………………まさか。
「おい、おまえ、それ犯罪だぞ? 不法侵入と器物損壊っていうんだぞ? 中坊だから何してもいーってわけじゃねぇんだぞ?」
「おにーさん、ガッコーのレベルの割には、難しい言葉知ってんじゃん」
なにっ!?
そりゃぁ、お世辞にもレベル高いとは言えねーガッコーだけどよ。
それくらい、一般常識だろ?
「大丈夫だよ。ちゃんと直せる。ところで、おにーさん、もう授業は終わったんでしょ?」
「あ? あぁ、きょうは終業式だからな。俺は帰宅部だし」
「じゃぁさ、これからボクについてこない?」
「はぁ?」
少年は、フェンスの穴から外に出て、俺に手を差し出した。
「失恋で傷ついてるキミを、ボクがなぐさめてあげるよ」
そう言って、俺は失恋直後の彼女を抱きしめようとした。
彼女は、俺が2年前から片思いしてきた相手だ。
俺が片思いを始めた頃から、彼女は別の男に思いを寄せていて。
ついさっき、ほんの3分前に、俺の目の前で彼女はその男にフラれた。
そんな彼女のことを、黙って見ていられなくなって。
気づいたら、彼女の腕を掴んで、自分の方へと引き寄せ……。
――――ドゴッ!!
「…………いっ……てぇぇ!」
みぞおちに激痛が走った。
目の前に、彼女の……靴底の裏。
…………ってことは、いま俺が食らったのは、蹴り!?
「っざけんじゃないわよ!冗談やめて!」
驚いて、腹を抱えたまま彼女の顔を見上げた。
――――うわっ、マジで怒ってる!?
「あんたなんてね、問題外よ! あんたに忘れさせてもらうくらいなら、その辺の野良犬になぐさめてもらったほうがマシよ!」
そんな捨てゼリフを残して、彼女は去っていった。
……そりゃぁさ。
最初っから、上手くいくなんて、思ってねーよ。
ひっぱたかれるかな、ぐらいには思ってたけど、それで俺の存在に気づいてくれるんだったら、それくらいどーってことねーって思って。
甘かった。
もっと慎重にいけばよかった。
いや、でも……。
それでも、どーせ結果は同じか。
あぁ、さようなら、俺の2年間――――。
「あーあ。これまた、派手にフラれたね、かわいそーに」
背後から、聞き覚えのない声がした。
少し低めの女の声。
なんだよ、見られてたのかよ、カッコわりーな。
……でも、これが『新たな出会い』ってこともある。
「じゃぁ、あんたが俺のことなぐさめてくれるの……か……」
振り返りながら言うと、そこに立っていたのは。
「あ……、え? おと……こ?」
膝丈のパンツのポケットに手を突っ込んで、俺のことを見ていたのは。
少しオレンジがかった茶髪に。
白く透き通るような肌の色の、細い手足。
そして、吸い込まれそうになるくらい澄んだ瞳の。
小柄だけど、なかなかの美少年。
そう、少年。
つまり、男……のコ。
「そーだよ、オトコだよ。声だけ聞いて、オンナだと思った?」
少年は、ニッと笑った。
……なんか、ちょっとムカツク。
「っつーか、おまえ、いくつだよ? 見たとこ、小学生じゃねーのか? なんでこんなとこにいんだよ?」
ここは、俺の通う高校の校舎裏。
この場所に入れるのは、このガッコーの生徒と先生。
つまり、15歳以上の、男女。
背後から聞こえてきた少年の声を、少し低めの女の声と勘違いしたって、不思議なことじゃない。
「ボク? 13だよ。中学1年」
「なんだよ。中1だったら、小学生と変わりねーじゃねぇか。なんで、このガッコーのこんな校舎裏にいんだよ。迷子か?」
「別に、イイじゃん、どーだって」
「いーわけねーだろ。迷子なら、連れてってやるよ。用があるのは、にーちゃんか? ねーちゃんか? 何年の何組――」
少年は、俺がそいつの手首を掴もうとしたのを軽くはたいた。
「迷子じゃないよ。ソコから入ってきたんだ」
そう言って、少年が指差したのは、穴の開いたフェンス。
「……なんでこんなところに穴が? さっき開いてなかったぞ?」
すると、少年が俺の肩をつついて、振り向いた俺に開いたリュックの中身を見せた。
中には、数種類の工具が入っている。
………………まさか。
「おい、おまえ、それ犯罪だぞ? 不法侵入と器物損壊っていうんだぞ? 中坊だから何してもいーってわけじゃねぇんだぞ?」
「おにーさん、ガッコーのレベルの割には、難しい言葉知ってんじゃん」
なにっ!?
そりゃぁ、お世辞にもレベル高いとは言えねーガッコーだけどよ。
それくらい、一般常識だろ?
「大丈夫だよ。ちゃんと直せる。ところで、おにーさん、もう授業は終わったんでしょ?」
「あ? あぁ、きょうは終業式だからな。俺は帰宅部だし」
「じゃぁさ、これからボクについてこない?」
「はぁ?」
少年は、フェンスの穴から外に出て、俺に手を差し出した。
「失恋で傷ついてるキミを、ボクがなぐさめてあげるよ」