男女7人!?夏物語~アイドルHinataの恋愛事情【3】~
05 アイドルグループ『Hinata』、爆誕。
中川に促されるまま、俺は手渡されたジャージに着替えた。
同じくジャージに着替えた中川と共に、事務所内をあちこち歩く。
「そこが、ダンスレッスンをするところで、ボイトレはまた別の階で……」
「なぁ……なんかよくわかんねーけどよ、俺、静岡だからそろそろ帰んねーと……」
「無理だよ」
「は?」
「帰るのは、当分無理だと思うよ。そうだな……きょうから夏休みでしょう? 休み中はずっとこっちにいるつもりでいないと」
「……なんでだよ?」
「心配要らないよ。こっちでの生活は、全部希さんがなんとかしてくれる」
「いや、そーじゃなくて、理由は?」
「ホントに、何にも聞かされてないんだね」
中川は『ダンスレッスンをするところ』の部屋のドアを開けて、言った。
「とりあえず、見学してったら? 後で希さんの話を聞いて納得いかなかったら、今日一泊だけして、明日帰ればいいよ」
『ダンスレッスンをするところ』には、中学生くらいの男子が20人くらいいた。
ほとんどが、俺より年下のようだ。
そんなやつらが、真剣にダンスしている。
いつか、アイドルとしてデビューするために。
俺が、こんなとこにいて、いいんだろうか?
将来のことなんか、何も考えていない俺なんかが……。
どのくらいの時間、『見学』していただろう。
事務所のスタッフらしき人と話をしていた中川が、俺に向かって言った。
「樋口くん、希さんが呼んでるって。高橋のやつ、もう着いたのかな」
「コレで、全員揃ったね」
希の部屋に着くと、希の他に、真面目そうな中学生くらいの男子が一人と、その男子よりいくらか年下の女子が一人いた。
「おぅ、高橋。久しぶり」
中川が、男子の方に声をかける。
……これが、高橋か。
「やぁ、盟くん。あ、じゃぁ……彼が?」
「そう。樋口直っていうんだ。高校3年だって。樋口、こっちが高橋ね。高橋諒。中学3年」
希が、俺と高橋に、それぞれを紹介した。
高橋は、無言で俺に右手を差し出す。
……握手ってことか?
俺は、その手を握った。
すると、高橋の表情が一瞬変わった……んだけど。
……ん?どーいう表情なのか、よくわかんねーぞ?
高橋は、俺の手を離すと、今度は中川の肩に手を置いた。
そして、うんうん、とうなずくと、俺の方に向き直って、とても穏やかな顔で言った。
「高橋諒です。よろしく。……あ、こっちは、僕の妹で、奈々子っていうんや」
と、隣にいた女子の方を指差した。
「今朝から両親が旅行に出掛けてしもて、大阪に一人で置いてくるわけにもいかへんかったから……希さんにお願いして、連れてきたんやけど」
高橋が妹の方に視線を向けると、その妹はペコリとお辞儀。
「じゃぁ、そろそろ本題に入ってイイかな?」
イスに座ったまま、希が俺たち3人の顔を見回した。
中川も高橋も、無言でうなずく。
……いったい、何が始まるんだ?
「キミたち3人で、新しいグループを結成する。デビューは、9月の半ば。リーダーは、樋口ね」
――――――――――――はぁ!?
な、なななな、なにっ!?
デ……デデデ……デビュー!?
しかも、リーダーが、俺!?
「ちょっ……ちょっと待てよ!」
俺は希に問い詰めた。
「デビューって……俺がか!? 今日の昼に訳も分からず連れて来られたようなヤツだぞ? 経験も、まったくねーぞ!? なんで、俺なんだよ? 俺なんかより、真面目に頑張ってるヤツがたくさんいるじゃねーか。しかも、リーダーが俺って、どーいうことだよ!? いくらなんでも、おかしいだろ!?」
「おかしくなんかナイよ」
希は、表情ひとつ変えずに続けた。
「『経験』や『どれだけ頑張ってるか』なんて、それほど重要じゃナイんだ。重要なのは、『適任かどうか』。ソレだけだよ」
「……『適任』?」
「そーだよ。ボクは、キミがこのグループのリーダーに適任だと判断した。だから、ココへ連れてきたんだ」
立ち上がった希は、中川と高橋に向かって、
「樋口がこのグループのリーダーに就くことに、異論はナイよね?」
中川と高橋は笑顔で、無言のままうなずいた。
同じくジャージに着替えた中川と共に、事務所内をあちこち歩く。
「そこが、ダンスレッスンをするところで、ボイトレはまた別の階で……」
「なぁ……なんかよくわかんねーけどよ、俺、静岡だからそろそろ帰んねーと……」
「無理だよ」
「は?」
「帰るのは、当分無理だと思うよ。そうだな……きょうから夏休みでしょう? 休み中はずっとこっちにいるつもりでいないと」
「……なんでだよ?」
「心配要らないよ。こっちでの生活は、全部希さんがなんとかしてくれる」
「いや、そーじゃなくて、理由は?」
「ホントに、何にも聞かされてないんだね」
中川は『ダンスレッスンをするところ』の部屋のドアを開けて、言った。
「とりあえず、見学してったら? 後で希さんの話を聞いて納得いかなかったら、今日一泊だけして、明日帰ればいいよ」
『ダンスレッスンをするところ』には、中学生くらいの男子が20人くらいいた。
ほとんどが、俺より年下のようだ。
そんなやつらが、真剣にダンスしている。
いつか、アイドルとしてデビューするために。
俺が、こんなとこにいて、いいんだろうか?
将来のことなんか、何も考えていない俺なんかが……。
どのくらいの時間、『見学』していただろう。
事務所のスタッフらしき人と話をしていた中川が、俺に向かって言った。
「樋口くん、希さんが呼んでるって。高橋のやつ、もう着いたのかな」
「コレで、全員揃ったね」
希の部屋に着くと、希の他に、真面目そうな中学生くらいの男子が一人と、その男子よりいくらか年下の女子が一人いた。
「おぅ、高橋。久しぶり」
中川が、男子の方に声をかける。
……これが、高橋か。
「やぁ、盟くん。あ、じゃぁ……彼が?」
「そう。樋口直っていうんだ。高校3年だって。樋口、こっちが高橋ね。高橋諒。中学3年」
希が、俺と高橋に、それぞれを紹介した。
高橋は、無言で俺に右手を差し出す。
……握手ってことか?
俺は、その手を握った。
すると、高橋の表情が一瞬変わった……んだけど。
……ん?どーいう表情なのか、よくわかんねーぞ?
高橋は、俺の手を離すと、今度は中川の肩に手を置いた。
そして、うんうん、とうなずくと、俺の方に向き直って、とても穏やかな顔で言った。
「高橋諒です。よろしく。……あ、こっちは、僕の妹で、奈々子っていうんや」
と、隣にいた女子の方を指差した。
「今朝から両親が旅行に出掛けてしもて、大阪に一人で置いてくるわけにもいかへんかったから……希さんにお願いして、連れてきたんやけど」
高橋が妹の方に視線を向けると、その妹はペコリとお辞儀。
「じゃぁ、そろそろ本題に入ってイイかな?」
イスに座ったまま、希が俺たち3人の顔を見回した。
中川も高橋も、無言でうなずく。
……いったい、何が始まるんだ?
「キミたち3人で、新しいグループを結成する。デビューは、9月の半ば。リーダーは、樋口ね」
――――――――――――はぁ!?
な、なななな、なにっ!?
デ……デデデ……デビュー!?
しかも、リーダーが、俺!?
「ちょっ……ちょっと待てよ!」
俺は希に問い詰めた。
「デビューって……俺がか!? 今日の昼に訳も分からず連れて来られたようなヤツだぞ? 経験も、まったくねーぞ!? なんで、俺なんだよ? 俺なんかより、真面目に頑張ってるヤツがたくさんいるじゃねーか。しかも、リーダーが俺って、どーいうことだよ!? いくらなんでも、おかしいだろ!?」
「おかしくなんかナイよ」
希は、表情ひとつ変えずに続けた。
「『経験』や『どれだけ頑張ってるか』なんて、それほど重要じゃナイんだ。重要なのは、『適任かどうか』。ソレだけだよ」
「……『適任』?」
「そーだよ。ボクは、キミがこのグループのリーダーに適任だと判断した。だから、ココへ連れてきたんだ」
立ち上がった希は、中川と高橋に向かって、
「樋口がこのグループのリーダーに就くことに、異論はナイよね?」
中川と高橋は笑顔で、無言のままうなずいた。