【女の事件】白紙委任
第5話
次の日の朝のことであった。

まさゆきが出勤して来た時、上司の男性は本店と電話をしていた。

10月10日頃に結婚式を挙げていたカップルさんが、花嫁さんの恋人さんが妨害をして台無しにした問題で、本店の人事担当者の人が『花嫁を奪った(本店の従業員)のクソバカのくさった根性をきたえなおすためにおたくの出張に強制転勤させるから…』と上司の男性に言うていた。

上司の男性は『それだったらうちの出張所へ来てもらおうかな…』と言うてショウダクした。

花嫁さんと結婚する予定であった消防士の男性は、まさよしに刃物で斬りつけられて心肺停止におちいったあと死亡している。

話は戻って…

上司の男性が受話器を置いた時に、まさゆきが出勤して来た。

上司の男性は、まさゆきに改めて本店から電話があったことを過度にやさしい声で言うた。

「まさゆきさん、ちょうどよかった…まさゆきさんにうれしいお知らせがあるよ。」
「また始まった…うんざりだよ(ブツブツ)」
「何なのだ朝からネクラな顔をして!!せっかくうれしいお知らせがあると言うのに、何だその顔は!!」

激怒していた上司の男性に対して、まさゆきはさらにいじけた表情になっていた。

「課長、うれしいお知らせがあると言うことを怒った声で言うのですか!?」
「まさゆきさんがいじけた表情をしているから怒ったのだよ!!」
「ですから、うれしいお知らせと言うのは本店へ勤務しろと言うことでしょ!!あんたのクソタワケタ話は聞きあきたわ(ブツブツ)」
「上司に対してその態度はなんだ!!」

上司の男性は、まさゆきに怒鳴りつけたあと大きくため息をついてこう言うた。

「うれしいお知らせと言うのは、10月10日の結婚式を台無しにされた花嫁さんを…まさゆきさんに紹介してあげようかなと思っていたのだよ…消防士さんが通り魔事件で亡くなったから、まさゆきさんに紹介してあげようと思っていたのだよ!!」
「課長、それって愛し合っているふたりを別れさせると言うことですか!?ぼくはそんなことしてまでも結婚したいとは思っていません!!断る!!」
「あのな、問題の男は寝ぼけたことを言うているから別れさせるのだよ!!問題の男うちで契約社員として再雇用することが決まった…問題の男はバカだから軌道修正しないといけないのだよ!!まさゆきさんは契約社員でずっとガマンをしてきたからボーナスとして、結婚相手を紹介する!!正社員登用で本店勤務でお給料もぐっと上がるのだよ!!ボーナスがついて、お手当ても出る…給料3ヶ月分の婚約指輪が買えるのだぞ!!お嫁さんを十分に養える…お嫁さんは専業主婦で通して行くことができるのだぞ!!家に帰ればお嫁さんの手料理が毎晩食べることができるのだぞ!!いい特典と言うのはそういうことなのだよ!!本店に行けば毎日が天国なんだぞ!!…問題の男は虫ケラ以下のバカだから、ただ働きでうちに来てもらうことになったのだよ…問題の男はラクチンコネで入行したクソバカでナマケモノなんだよ…問題の男の家のもんかバカだからああなったのだよ…ったく、どいつもこいつも(ブツブツ)きさまな!!本店勤務が決まったと聞いたら素直にうれしいと喜べ!!」

上司の男性は、まさゆきをボロクソに怒鳴りつけた後、トイレへ行った。

上司の男性からボロクソに怒鳴られたまさゆきは『寝ぼけたことをぬかすなボケ課長!!』と怒っていたので、上司のデスクの上にあるDCマスターカード(法人のクレジットカード)を盗んだ。

まさゆきは、盗んだクレジットカードを使ってスマホのオンラインゲームで高額なアイテムを買いあさった。

この時、まさゆきの心は大きく壊れていた。

それから9日後のことであった。

まさゆきが出勤をして来た時、上司の男性がギャーと叫んでいた。

オンラインゲームの高額なアイテムの代金の請求書が届いたので『一体どういうことなんだ!!』と叫んでいた。

しかし、まさゆきは何食わぬ顔していつものように仕事をしていた。

10月26日に、銀行の本店は今回の問題でまさゆきに自宅待機を命じた。

ところ変わって、まさゆきの家にて…

電話の応対をしていたしほは、受話器を置いた後に大きくため息をついていた。

その時、アロハシャツ姿で大きめのスーツケースとホンマゴルフのロゴいりの大きめのゴルフバッグを持っているしほのダンナがやって来た。

しほは、家から出て行こうとしていたダンナに思い切りキレた。

「あなた…あなたこれからどこへ行こうとしているのよ!?」
「どこへ行くって…学会だよ学会…」
「学会…あなた…アロハシャツ姿で大きめのスーツケースに大きめのゴルフバッグを持って、どこへ学会へ行くのよ!!学会とウソをついて、ハワイへゴルフ三昧をしに行く気なのね!!」
「おい、オレは道楽でハワイに行くわけじゃないのだよぉ…本当に学会なんだよ…」
「あなた!!いいかげんにしてくださいよ!!おとといの土曜日にあなたが競馬場へ行っていたことが近所の奥さまに知られてしまったので思いきりキレているのよ!!その前は水戸のソープランドへ行っていたことが明らかになっているのよ!!学会学会学会…あんたは学会のためにギャンブルをしたり風俗店通いをしていたと言うわけなのね!!」
「違うのだよぉ…医師会の会員の医師がそのように言うので連れて行ったのだよ…」
「信用できないわよ!!それじゃあ、アロハシャツ姿で大きめのスーツケースと大きめのゴルフバッグを持ってハワイへ行くのも学会で行くのかしら!!」
「だから、学会だと言うているだろ!!」
「誰の主催の学会なのよ!!」
「だから…私がアメリカへ留学をしていた時にお世話になった大学の教授の主催の学会だよ!!」
「ウソばっかり!!」
「本当だよ!!」
「あなたね!!学会をだしにして、ゴルフ三昧をしに行くのでしょ!!あなた!!病院を経営して行く意思はあるの!?ないの!?」
「あるよぉ…」
「病院を続けたいのであれば、急いでまさゆきのお嫁さんを探してよ!!」
「分かっているよそんなことは!!」
「分かっているのだったら動きなさいよ!!」
「だから、先方さんと調整しているよ…だけど時間が取れないのだよ!!」
「いつになったら時間が取れるのよ!!」
「だから、緊急のオペなどがあるから時間が取れないというているのよ!!」
「それじゃあ、女医さんと結婚することはやめにしてよ!!看護婦さんか栄養士さんか薬剤師さんに変えてよ!!…いいえ、あんたはいいかげんするからまさゆきの結婚に関わらないで!!」
「関わるなって…」
「あんたはナマクラだから関わるなと言うことよ!!ナマクラテイシュ!!」
「何だと!!ナマクラ妻!!」

ふたりは大ゲンカを起こした末に、背中を向けてしまった。

ダンナは、しほからボロクソになじられたのでひどく傷ついていた。

しほは、仕事がうまく行かないので、気持ちがギスギスとしていた。

しほは、この日2時間だけ勤務して早退けをすることにした。

しほは、病院のトイレの洗面所にいて、鏡を見つめていた。

気持ちがさらにイライラしていたので、いい顔に写っていなかった。

何なのよ一体!!

まさゆきの結婚問題が深刻になっていると言うのに…

ダンナはどうしてムカンシンになっているのかしら!!

キーッ!!

(バシャ!!)

キーッ!!と怒っているしほは、洗面所の鏡に水を思いきりかけた。

そこへ、ソウジのパートの女性がやって来て、心配そうな声でしほに言うた。

「しほさん。」
「(ソウジのパートの女性)さん…」
「大丈夫かい…あんた、顔が真っ青になっているわよ…」
「ええ…けさがた…ダンナと大ゲンカになってしまったので…気持ちがイライラしているのです…」
「ダンナと大ゲンカを起こした?」
「ええ…」
「もしかして…まさゆきさんの結婚問題のことでもめてしまったのかい?」
「ええ…ダンナは…まさゆきの結婚問題にシンケンに向き合わなくなったわ…」
「ダンナがまさゆきさんの結婚問題にムカンシンになってしまったの?」
「ええ…アタシは医療関係以外の女性に変えると言うたら、ダンナが逆ギレを起こしたのです。」
「ダンナが逆ギレを起こしたって?」
「ダンナはナマクラだから、病院を経営して行く意思がないのよ!!ダンナは、勤めていた病院に『待遇面が悪いから…』と言うてタンカ切って『独立するから病院をやめます。』と言うて騒ぐだけ騒いだのよ…ところが、病院ができたとたんに経営はそっちのけで、豪遊ザンマイよ…けさがた、アロハシャツ姿で大きめスーツケースとゴルフバッグを持って『学会があるから…』と言うて出かけた…その前は、医師会の会員の医師にせがまれたので競馬場や風俗店に行った…学会だとウソをついて遊びに行く…本当に学会がある日は仮病使って政治家先生や県議会議員さんと豪遊ザンマイをしていた…サイアクだわ!!」
「本当にサイアクね…しほさんのダンナさんはどこのどこまでムカンシンなのかしらねぇ…」

ソウジのパートの女性は、深刻な声でこう言うた後、しほにこんな話を持ちかけた。

「しほさん…ちょいと小耳にはさんだ話なのだけど…しほさんのダンナさんは、アロハシャツ姿で大きめスーツケースとゴルフバッグを持って学会と言うて出かけたよね…その後のことで…よくない話を聞いたの…」
「よくない話?」
「しほさんのダンナさんの交遊関係のことで言わしてもらうけど、しほさんのダンナさん、いつ頃からやくざ関係の人間と交遊関係を持つようになったのかしら?」
「やくざ関係の人間と交遊関係って…うちのダンナがやくざ関係の人間と交遊関係を持っていた話は…今日初めて聞いたけど…」
「思い当たるふしはあるの?」
「いえ…アタシは…聞いていません…」
「そう…このままだと、まさゆきさんはもう一生お嫁さんをもらうことができないわねぇ…もしかしたらの話だけど、しほさんのダンナさんは以前勤務していた病院でもめ事を起こしていたかもしれないわねぇ…」

しほは、ソウジのパートの女性からダンナがやくざ関係の人間と交遊関係があったことを聞いたので、背筋が凍りついた。

早いうちに手を打たないと取り返しがつかなくなる…

そう思ったしほは、ダンナがいないうちに後始末をすることを決意した。

しほは、ダンナがいない間に強行策に出た。

しほは、青葉区内のダンナが経営している病院の敷地をビルごと売却して、さら地にする手続きを10月30日までに進めた。

10月30日に、建物の中から大量に備品を運び出された後、すぐに強制解体に入る。

午前中にリサイクルショップのスタッフたちがやって来て、病院の中にある備品類を全部外へ運び出した。

午後、パワーショベルを使って建物の強制解体を始めた。

(ダダダダダダダダダダ!!ダダダダダダダダダダ!!)

しほのダンナの無鉄砲で作られた病院の建物は、パワーショベルによってこっぱみじんに壊れた。

しほのダンナが経営していた病院は、跡形もなく壊れてただのさら地になった。

ダンナの無鉄砲で作られた病院は、こっぱみじんに壊れたので、家庭に平和を取り戻すことができました。

これでめでたしめでたしでハッピーエンド…

しかし、それは大きな間違いであった。

しほが病院の解体や売却を勝手に進めたことが原因で、周囲に甚大な被害が生じた。

問題の病院の敷地は、ダンナがかつて勤務していた病院のものであった。

所有名義が知らないところで書き換えられていたことを知った病院の経営者が大パニックを起こした。

しほのダンナが経営していた病院の敷地は、しほのダンナの名義ではなく、ダンナがかつて勤務をしていた病院の院長の娘ムコの名義で、貸土地であった。

つまり、しほはダンナが勤務していた病院の院長の娘ムコに相談せずに、勝手に名義変更をして敷地を売却していた。

それを知った娘ムコは、激怒していた。

そのことが原因で、さらに恐ろしい悲劇が襲いかかるのであった。
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