ノクターンⅡ
「智之ね、会社でとても評判がいいよ。まだ仕事らしい仕事は していないけれど。みんなと掃除をするとか、コピー用紙を補充するとか、そんな事も気軽に動くから。」
私は、とても嬉しく お父様の話しを聞く。
「社長の息子で、しかも一流商社から来るって みんな構えていたからね。拍子抜けするくらい謙虚だし、親しみやすくて驚いていたよ。」
お父様も、嬉しそうに話してくれる。
「本当ですか。良かった。智くんなら大丈夫、って思っていましたけれど。」
私はちょっと自慢気に言う。
お父様は、心地よい声で笑いながら、
「今日は、麻有ちゃんの、のろ気か。」と言う。
ハワイの解放感で、私は頷く。
「自慢の旦那様なので。」と。
「何か、楽しそうじゃない。」とお母様が入ってくる。
「麻有ちゃんの、のろ気を聞いていたんだよ。」
お父様が、まだ笑ったまま言う。
「やだ、結局、智之なの。」お母様が言い、
「自慢の旦那様らしいよ。」
お父様が、伝える。気持ち良く笑いながら。
「改めて言われると、恥ずかしいですね。」
私も笑ってしまう。
さっき交わした歓びの余韻が 甘く蘇ってきて 微かに頬を染める。