【短】秘密の6分間
「で、でも、きっと田中くんが告白すればいけるよ!」


『田中くんカッコイイし』と、柄にも無く後付けしてみる。

言ってから、恥ずかしくなって、顔が熱くなった。


「岡本さん。そう思う?」


どっちの言葉に対してかは分からないけど、とりあえず、頷く。

田中くんは、なにかを言うわけでもなく。沈黙が流れた。

私はというと、恥ずかしくて彼の顔が見れず、俯き続けていた。

でも、あまりに長い間二人とも黙っているから思い切って、顔を上げた。

━━━━━━━田中くんも顔が赤い。

私の視線に気がついた田中くんがはっと、我に返る。


「・・・・・・じゃあ、すぐにでも告白しようかな」


「う、うん」


さらに動揺してしまう。

あーあ。墓穴掘った。

話の流れとはいえ、なんで、背中押しちゃうの?!

このまま、付き合っちゃったりするのかな。


「・・・・・・好きなんだ。」

「うん。」


「瑠里ちゃん。好きだよ。」

「うん、・・・・・・へ?」


思考回路が追いつかず、あまりに気の抜けた返事をしてしまった。

そのとき、ドアが開いて、田中くんは、「じゃあね」と私を残して行ってしまう。

じわじわと心拍数は跳ね上がって、全身の血が逆流するような感覚だった。

暑くて、立っていられない。

ここが電車じゃなければ、座り込んでいた。

ずるい。いつも苗字なのに名前で呼ぶなんて。ずるいし、電車降りちゃうのもずるい。


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