【恋愛短編】ドーナツとケータイ小説
【ドーナツとケータイ小説】
いつのことであったのかよく覚えていないけどぉ…たしか11月の中旬の第3月曜日のことであったかなァ…

アタシ・奈美(22歳)は、今治のフジグランの中にあるミスドでバイトをしていた。

東京の高校を卒業した後、アタシは神戸の女子大に進学をして、花の女子大生ライフを送っていた。

高校の時につき合っていたカレと一緒に大学に行こうねと約束していたことと、合コンで知り合ったカレとの間で板挟みにあった。

だからアタシは、実家の両親にウソをついて休学をした。

その後、アタシは夜行バスに乗って四国の今治へ逃げて来た。

アタシは、今治で暮らしている知人の家に転がり込んだ後、知人からの紹介でミスドのバイトを始めた。

この時アタシは、大学をやめて結婚しようと思っていた。

知人からの紹介で入会した愛媛県のお見合い事業『愛結び』で、結婚相手を探すことにした。

会費は2年間で1万円、一回のお見合いが2000円と安い…

アタシは、実家にお願いして戸籍抄本を取り寄せてもらった。

そして、すぐに『愛結び』に入会した。

『愛結び』に入会したアタシは、結婚相手を探すのだと意気込んでいた。

けれど、アタシの気持ちが結婚に向いていなかった。

この1年11ヶ月の間、相手の情報を閲覧するだけがつづいていたので、アタシの身丈に合う結婚相手が見つからなかった。

この時、実家の両親が『いつになったら大学に復学をするのだ…復学しないのであれば実家へ帰って来てこい!!』と小うるさく言うていた。

実家へ帰ったあとは、大学をやめておじさんが経営している工場へ就職する…

就職したら、給料引きで注文をしたお弁当でお昼ごはんを食べて、決められた時間内に段ボール箱の折りたたみをして、仕事が終わったら家にまっすぐに帰る。

家族で晩ごはんを食べて、おとーさんが見たい番組を家族みんなが1台のテレビで見る。

休日は、おとーさんの上司の子供さんやお孫さんのピアノ発表会や幼稚園のオユウギカイを見に行って、おとーさんの上司の機嫌を取る…

親族の挙式披露宴に家族みんなで出席をして、家族みんなで慶ぶ…

パターン化された実家暮らしは、息がつまるから絶対イヤ…

そういうことで、アタシは早いうちに結婚相手を見つけたいと思っていた。

結婚後は専業主婦で通す…

希望する相手の条件は、正社員で年収は賞与込みで600万以上…

そのような条件に設定してお相手探しをしていたけど、早々とけつまづいた(こけた)みたい…

1年11ヶ月もお見合い相手の情報の閲覧ばかりが続いていたので、事務局の職員さんのいらだちが高まっていた。

『この人は、結婚する意思があるのかないのか、はっきりしていないみたいね…』と職員さんたちから思われていたので、アタシは結婚相手を探すのをやめようと思っていた。

期間が満了を迎える2週間前に愛結びに行った時だった。

アタシは、職員さんから『あなたはいつになったらお見合いをするのかしら…結婚する気はあるのかしら…』と小言を言われた。

職員さんは、電話の受話器を取って『あなたの実家へ電話します…迎えに来てもらうようにお願いするから…』と言うて、あつかましい表情でアタシの実家へ電話をかけようとしていた。

アタシは『困ります!!実家へ電話をしないで!!』と言うて止めた。

職員さんは『本当に結婚をする気持ちはあるのですか!?』とアタシに言うた。

アタシは『はい、お見合いをします。』と言うて、お見合いの申し込みをした。

そしたら、職員さんはアタシに『少し条件が悪くてもいいかしら…』と言うた。

だからアタシは『多少条件が悪くてもいいのでお願いします…』と言うてお見合いを申し込んだ。

しかし、条件が少しどころか劣悪な条件に近い男性しかいなかった。

サイアクだわ…

アタシは『やっぱりやめる。』と言うた。

そしたら職員さんが『それだったら実家へ電話しますよ!!』と言うた。

だからアタシは『どーぞご勝手に!!』と言うてブチ切れた。

この時、実家の両親に迎えに来ていただより他はなかった。

バンサクつきたわ…

ところがどういうわけなのか、職員さんは同じ愛結びで結婚相手を探している40代の自営業の男性の家に電話をしていた。

この1本の電話が、やがてアタシをお見合いへと導いた。

アタシは、40代の自営業者の男性と11月16日にいまこく(今治国際ホテル)でお見合いをすることが決まったので、気持ちがウキウキしていた。

お見合い当日の朝9時半過ぎのことであった。

アタシは、いつものようにミスドでバイトをしていた。

アタシは、レジにいて代金の計算をしていた。

レジカウンターに黒の四角の大きめのショルダーバッグを持っている男性客がいた。

アタシは、お客さまが注文した商品の計算をして、お客さまから受け取ったサークルKのポイントカード(楽天のポイントカード)にデーターを通して、お客さまからの代金を受け取った後、おつりを渡していた。

この時、アタシはおつりを間違えて渡した。

男性客が『レシートの代金とオレが支払った金額を差し引いたお釣りが200円足りないゾ!!』と怒っていた。

「オドレはバイトを何だと思っているのだ!!オレは1030円払った…ドーナツ2個・200円とホットコーヒー230円の合計は430円…おつりは600円なのに、なんで400円なんだ!!」
「(だるい声で)えっ?630円と言うたけどぉ…」
「オドレは1030-430=400円だと言うのか!!オドレが卒業した小学校のセンコウは間違いを教えていたのか!?オドレはどこの小学校の卒業だ!!学校名を言え!!」

この時、居合わせた女性店員さんが来て、男性客の対応に当たっていた。

けれど、男性客はご立腹であった。

別の女性店員さんが男性客に『もうしわけありませんでした…』とあやまった。

しかし、男性客は『そんなひらあやまりで許されると想っているのか!!ドーナツは食べんから200円減らせ!!』と怒っていたけん、ますます気まずくなった。

アタシは、居合わせた別の女性店員さんから『お客さまがご立腹になっているから、コーヒーを持っていってあやまりに行きなさい!!』と小言を言われたけん、アタシはショボーンとしていた。

アタシは、男性客が座っている席にコーヒーを持って行って『すみませんでした…』と言うてあやまった。

けれど、男性客はムスッと表情になっていて『用が終わったら持ち場へもどれ!!オドレはバイトを何だと思っているのだ!!けしからん!!』と怒っていた。

アタシは、以前にも似たような大失態を繰り返していた。

例えば、コーヒーのおかわりを求めているのにアタシが店番をしているときにスマホのラインに夢中になっていた…

レジで計算間違いをしていたことなど…

アタシは、男性客は店長や副店長に『お客さまが主人公だと言うことを頭に入れておけ!!』と言うて、アタシにクドクドとお小言を言われていた。

周囲からも『あんたにミスドは合わないわ…ダスキンの本部へ行ってハウスクリーニングでもしている方がお似合いよ!!』とイヤミばかりを言われていたので、気持ちがへこんでいる。

それだったら、親会社のダスキンの方へ変わろうかと思っていたので、ミスドでバイトをして行く自信がなくなった。

アタシは、そんななあなあとした気持ちを抱えて愛結びのお見合いをしていたけん、お断りして東京へ逃げて帰ろうと思っていた。

片や、相手の男性は事務局に電話で『一度会ってから決めます…』とだけ伝えていた。

アタシは、事務局からの電話で11月17日にいまこくのエントランスホールのカフェテリアでお見合いをする知らせを聞いた。

アタシは、愛結びの事務局に電話をしてお見合いをしたら、その日のうちに東京へ帰ることを決めたと伝えた。

アタシは、もうどーでもいいやと言う気持ちになっていた。

アタシがいまこくのエントランスのカフェテリアに来た時であった。

アタシとお見合いをする男性が、前日にミスドに来ていた男性客と合って会話をしていた。

アタシとお見合いをする男性は、コーヒーをのみながらこんな話をしていた。

「お嫁さん…オレは、お嫁さんがほしいと言う気持ちはあったけれど…脱サラをして、放浪することを選んだので、結婚しても意味がないよ…収入は実家の家族からの仕送りの10数万円だけ…そんな暮らしでどうやってお嫁さんを養うのだ…無理だよ…脱サラをしてケータイ小説の業界に入った…浮き沈みが激しい業界に身を投じたオレの気持ちも考えろよ…木本くんは、オレの悩める胸のうちが分かっているのかな…」
「分かっているよひろたか…」
「ホンマに分かっているのかよぉ…」

この時アタシは、前日にミスドに来ていた男性客が脱サラをして4年間ケータイ小説を書いているお仕事をしていると言うことを知った。

しばらくして、アタシがエントランスのカフェテリアに行った。

アタシとお見合いをする予定の木本さんが、アタシにケータイ小説の作家のひろたかさんを紹介した。

その後、木本さんはアタシを置き去りにしてホテルから出ていった。

アタシは、ひろたかさんにこう言うた。

「昨日はすみませんでした…お見合いができるのでウキウキしていて…」
「昨日のことはいい…仕事の失敗は仕事で取り返せばいいのだ…」
「えっ…」

仕事の失敗は仕事で取り返せばいい…

どういうわけなのか分からない…

ひろたかさんは、アタシにこう言うた。

「そんなことよりも、せっかく会ったのだからもっと楽しい話をしましょう…ああ、そうだ…カラオケの話をしようか…」

ひろたかさんは、アタシに歌の話をした。

ひろたかさんの歌の話は、演歌が中心であったので『オレの人生は、演歌の人生だったのだよ…』と言うてから演歌の話をしていた。

他にも、旅の話やスポーツの話などをしていた。

アタシは、ひろたかさんからメモを受け取ったあと『早速読ませていただきます…』と言うて、ホテルをあとにした。

その翌日に、アタシは愛結びの事務局にお見合いのお断りの電話をして、ミスドをやめて東京へ帰った。

しかし…

どういう縁であるのか知らないが、ひろたかさんと再び会うことになった。

さて、それから8日後のことであった。

アタシは、愛結びをやめたのと同時にミスドのバイトをやめて東京へ帰って来た。

父親のすすめでおじが経営する工場に就職したけど、すぐにやめた。

女子大やめて家出したアタシは、湯島3丁目にあるカプセルホテルでリネンの仕事を始めた。

しかし、それだけでは足りないので、不足分を稼ぐためにホテヘル店に入店して、かけもちでバイトをしていた。

時は、11月24日頃のことであった。

場所は、上野公園の不忍池(しのばずのいけ)の広場にて…

この時、アタシはひろたかさんを見かけた。

どうやって、東京までやって来たのかな…

アタシは、そんなことを思いながらひろたかさんに近づいて見た。

大きめの黒の四角いショルダーバッグをたすき掛けをして立っているひろたかさんは、スマホのカメラで公園の風景を撮影をしていた。

撮影を終えた後、アプリを閉じて電源をオフにして、愛用のエクスペリアをクリーム色のベストの内ポケットにしまって、ファスナーを閉じた。

それからしばらくして、ひろたかさんの元にアタシがやって来た。

「ひろたかさん。」
「あなたは…奈美さん…」
「お久しぶりです。」
「ああ…」

ひろたかさんは、アタシになんで東京に戻ったのかとたずねた。

「奈美さん…ミスドは?」
「やめた…」
「やめた?」
「うん。」
「どうして?」
「友人にだまされたから…」
「だまされた?」
「ミスドでバイトをすれば、親会社のダスキンに就職できるよ…と言うた…ダスキンに就職できると思っていたら…違っていた…」
「それで職場放棄をしたのだ。」
「だって…アタシ…大手企業に向いていないの…と言うよりも…アタシ…誰でもいいから…条件が悪くてもいいから…少しハードルを下げて、結婚相手を探すことにしたわ。」
「やっぱり結婚したいのか。」
「アタシ…会社勤めがイヤなの!!それだったら、結婚して、専業主婦をしている方が気楽だわ。」
「それでいいのか?女子大は?」
「女子大もやめた!!」
「何で?」
「意味がなくなったから…」
「意味がなくなったからって?」
「最初、やりたいことがあったけれど…途中で意味がなくなったから…」
「それじゃあ、何がしたかったの?」
「ないわよ…最初からやりたいことがなかったのよ…勉強したいことも…やりたいことも…」
「そうか…それだったら、高校卒業で終わらせたらよかったのにな…オレは、高校を卒業したけど、大学にはゆかなんだ…大学なんて遊びに行くためだと思っている…だからそんな女子大やめて正解なんや。」
「そうね…」
「大学へ行ったからエエトコへ就職できるとか…お見合いに有利になるわけじゃないからええやろ…そんなイヤイヤな気持ちで大学へ行ったら、人生しまいや…やめいやめい…」

ひろたかさんは、ひと間隔を置いてこう言うた。

「それで、今はなにしよん?」
「アタシ…ミスドのバイトと女子大をやめて…ホテヘル店で働いている…」
「ちょうどいいや…オレ、風俗のコと付き合いしたかったんや…取材が終わったから、どこかへ行かないか?オレ、ナンバーズ4で100万円当てたけん、そのおカネで東京に来たのだよ…」
「そうなんだ…」
「これから東京テレポートへ向かう予定だけど、一緒に行く?」
「台場へ行くの?うん、行く行く~」

その後、アタシはひろたかさんと一緒に台場へ遊びに行った。

アタシとひろたかさんは、天王洲アイルのショッピングモールや台場海浜公園などへ行って、楽しいひとときを過ごした。

夕方6時頃のことであった。

アタシとひろたかさんは、アメ横の通りのガード下の居酒屋さんに行って、酒をのみながらお話をしていた。

ふたりは、冷酒とお新香だけを注文した。

(ひろたかさんが食欲不振だったので、お新香だけを注文した。)

店内の有線放送からは、石井明美さんの歌で『響きはチュチュ』が流れていた。

アタシとひろたかさんは、お酒をのみながらこんなお話をしていた。

「ひろたかさん。」
「何や?」
「ひろたかさんは、いつ東京にきたの?」
「いつって…昨日…在来線の列車を乗り継いで来た…」
「在来線の列車?」
「そうだよ…特急の代金を節約するために、在来線の列車を乗り継いで来た…」
「東京に知り合いはいるの?」
「いない…」
「どうするのよ…」
「どうするのよって…野宿するか、コンビニのサロン席に寝泊まりする…宿があっても、条件が悪い簡易宿に泊まるよ…だって仕方がないじゃないか…放浪することを選んだ以上、条件が悪い場所しか寝る場所がないのだ…」
「そんな…」
「仕方ねーだろ…オレだって、職場にタンカ切って雇用契約を破綻させてやめたのだ。」
「どうして?」
「雇用契約の書面と違うことを職場がしていたから、頭に来て会社をやめた…」
「どうして?」
「どうしてって、雇用主が勝手なことをしていたからそのようになったのだよ!!」

アタシにこう言うたひろたかさんは、冷酒が入っているサツマキリコのタンブラーを持ってごくごくとのみほしていた。

アタシは、何も言わずにサツマキリコの冷酒が入っているピッチャーを手に取って、ひろたかさんに酒をついでいた。

有線放送のスピーカーから流れている歌は、荻野目洋子さんの歌で『湾岸太陽族』に変わった。

ひろたかさんは、酒をつぎ終えたタンブラーを手に取って、酒をひとくちのんでからアタシにこう言うた。

「オレが今の業界に入るまでは…ふなれな会社勤めしか知らなかった…生きて行くすべを知らなかったので、最初に勤めていた建材屋をやめて、しばらくプータローだった時に…ハローワーク通いをしていたけれど…アホらしくなってやめた…どうにか定時制高校に行くことができた…高校卒業の資格を取ることができたけど…オレが望んでいる人生ではなかった…オレ、何をやっているのだろうと思って…正直言って…」
「むなしくなっちゃった…」
「ああ…」
「それで、ケータイ小説の業界に入った…」
「そうだよ…文句あるかよ…」
「ないけど…」
「奈美に聞くけれど…奈美は、どうして神戸の女子大に行ったんや?」
「どうしてって…アタシ…高校の時に付き合っていたカレと同じ大学に行きたいと思っていたの…だけど…カレが不合格になったので…1年浪人したのよ…アタシ…その時に滑り止めで受けて合格した神戸の女子大に合格していたからそっちを選んだ…カレと同じ大学に行けなかったの…その時に大学の先輩から…」
「合コンに誘われたのだね…」
「うん…」
「やめた理由は、男のことか…」
「言わなくても分かるでしょ…アタシ、合コンでであったカレとこじれたのよ。」
「だから奈美は大学をやめたんだ。」
「そうよ…ひろたかさんの言うとおりに大学へ行ったのは、合コンをするために行ったのよ。」
「分かった…もうその辺りでやめておけ…」
「うん…」
「奈美…」
「なあに?」
「ラブホへ行こうか…」
「ラブホ…」
「ああ…お前、仕事は?」
「休み…」
「ほな、行こうか…今日は…お前を抱いて…眠りたい…」

アタシは、ひろたかさんに誘われて鴬谷の駅前の通りにあるラブホへ行って、一夜を過ごすことにした。

ところ変わって、鴬谷の駅前通りにあるラブホにて…

ひろたかさんは、アタシをベッドに寝かせた後、髪の毛をくしゃくしゃにしながらキスをして、アタシの身体をむさぼっていた。

ひろたかさんに抱かれているアタシは、泣き声をあげていた。

アタシとひろたかさんが会ったのは、11月24日だけであった。

しかし、どういうわけなのかアタシはひろたかさんのことが好きになっていた。

そして、年が明けて2016年になった。

アタシは、両親からのすすめで父親の職場の上司の親類の家の次男さんとお見合いをすることになった。

アタシは、2016年2月13日に上野の料亭でお見合いをした。

二人きりになった時に、上野公園の不忍池の広場でひろたかさんとよく似た男の人をみたので、とっさになってお見合い相手の人を突き飛ばして出て行った。

アタシは、辺りを見渡したが彼は見つからなかった。

アタシの思い違いが原因で、お見合いは壊れた。

アタシがひろたかさんと再び会ったのは、翌日のバレンタインデーであった。

アタシは、上野公園の不忍池の広場で再びひろたかさんと会った。

この時、アタシの左のほほには大きめのバンソウコウを貼っていた。

「奈美…」
「ひろたかさん…」
「どうしたのだ…大きめのバンソウコウは…誰かに殴られたのか…」
「転んだのよ…」
「ウソだ…ホンマは殴られたのだろ…」
「うん…」
「だれに殴られた?」
「お見合い相手…」
「お見合い相手…」
「父親の上司の親類の子よ…だけど…セクハラの前科があったのよ…」
「セクハラの前科があった…」
「海外栄転で、4月から家のルスを守れる人がほしいというていたたけど…本当はセクハラが原因で、与那国島へ左遷されることが決まっていたのよ…アタシはそんなセクハラ男とは結婚したくないから…お断りしたわ…だけど、相手がしつこくアタシに迫ってきたから、往復ビンタを喰らわせたわ。」
「それで、相手から反撃を喰らったのだ。」
「そう言うことよ。」

本当は、父親からグーで殴られて大ケガを負ったのだけどぉ…

ウソをついてごめんね…

ひろたかさんは、アタシがウソをついていることに全く気がついていない…

けれど、ひろたかさんはアタシにこう言うた。

「そうなんだ…分かった…それじゃあ…昨日のお見合いは…セクハラ問題を解決するために…と言うか…セクハラ問題を二度と起こさないようにするためのお見合いだったと言うことにしておこう…」

ひろたかさんは、ひと間隔を空けてからアタシにこう言うた。

「オレ…今日奈美に会って言わなければならないことがあるのだよ…オレ…4年間ケータイ小説を続けていたけどぉ…このたび…正式に…書籍化されることが決まったよ…」
「書籍化…」
「…といっても…自費出版だけど…年末ジャンボで大当たりしたから、その大金を使って、書籍化することにした…さっき、印刷会社に行ってた…あさってには、本が出来上がる…あさってからは…完全に放浪生活に入ることになった…」
「やっと…夢が実現できたのね…」
「いや、これからが本当の勝負だ…あさってからキャンペーンに入ることになった…やめた高校にいた時の木本くんが…オレのケータイ小説のキャンペーンに同行することになったよ。」
「つぎは…いつ会えるの?」
「さあな…分からない。」

ひろたかさんは、アタシと別れて出発しようとしていた。

アタシは、ひろたかさんを止めた。

「待って…待って…」

アタシは、ひろたかさんに抱きついて行かないでと言うて甘えていた。

「アタシ…ひろたかさんのことが…好きなの…大好きなの…」
「奈美…」
「お願い…もう一度だけ…アタシを抱いて…お願い…ひろたかさん…」

その日の夜のことであった。

アタシとひろたかさんは、鴬谷の駅前通りにあるラブホに行って、ベッドの上で再び抱き合っていた。

ひろたかさんは、アタシの身体をボロボロになるまでむさぼっていた。

ひろたかさんは、約180分間に渡ってアタシの身体をむさぼった後、アタシが眠っている間にラブホを出た。

アタシが目覚めたとき、ひろたかさんはいなかった。

ひとり残されたアタシは、テーブルに顔を伏せて声をあげて泣いていた。

【おしまい】
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