妖しな嫁入り
「そうだ。似合うだろうと思っていたが、想像以上で驚いている。君の肌は白いので映えるな」
そう言って朧は目を細め表情を和らげた。
私は朧の言葉の真意を追求しようと頭を悩ませる。
「世辞はいらない。似合わなければ、ただ何も言わなければいいことなのに……もちろん無理やり着せておきながら『似合わない』と面と向かって言おうものなら、その顔に一発お見舞いしたとは思うけど」
「おいおい、物騒だな」
「でも、似合うと言ってくれた。信じ難いことに……目を疑う」
「そして酷い言われ様だな」
朧は馬鹿にしなかった。貶しもしなかったのに。ただ、素直に称賛を受け入れる勇気が持てないだけだ。
「その……私は」
「どうした?」
たった一言を告げるだけでこんなにも緊張する。野菊には簡単に言えた。だからたとえ妖相手でも問題ないはずだと実証済みなのに。
「その、だから……」
同じ妖相手でも相手が問題なのだ、おそらく。
「着物は、気に入ったから。だから……ありがとう」
決して嫌なものではなかった。むしろ美しいと気に入ったからこそ、私が貶める存在になりたくなかった。
「君は口数が少ないだけに開いた時の破壊力が凄まじいな」
どういう意味かわからずにいると「そのままの意味だ」と言われた。呆れられている雰囲気に意味がわからないのは私だけらしい。事態を呑み込めないでいると、畳みかけるようにさらに驚愕の発言がもたらされる。
「ところで椿。すまないが、君に謝らなければならないことがある」
この短い期間に己の耳を疑うのは何度目か。
「謝る? 私に?」
「昨夜君と出会った場所まで出向いてみたのだが、刀は見当たらなかった。廃刀令の時代だ、警備に押収されてしまったのかもしれない。もし許されるのであれば改めて新しい物を贈らせてくれ」
ここに来てから、いや朧と出会ってから驚かされることの連続だ。ちなみに不動の第一位は求婚であるが、その中でもこれは上位に入る。
「どうして謝るの」
「大切に、いや。大切でなくともあれがないと不安なのだろう。寂しいと言うべきか?」
自分ですら持て余している感情を、朧は理解していると言うのか。
「私は別に……」
「ほら見たことか、やはり寂しいのだろう。いずれ夫婦になるのだから隠すこともない」
そう言って朧は目を細め表情を和らげた。
私は朧の言葉の真意を追求しようと頭を悩ませる。
「世辞はいらない。似合わなければ、ただ何も言わなければいいことなのに……もちろん無理やり着せておきながら『似合わない』と面と向かって言おうものなら、その顔に一発お見舞いしたとは思うけど」
「おいおい、物騒だな」
「でも、似合うと言ってくれた。信じ難いことに……目を疑う」
「そして酷い言われ様だな」
朧は馬鹿にしなかった。貶しもしなかったのに。ただ、素直に称賛を受け入れる勇気が持てないだけだ。
「その……私は」
「どうした?」
たった一言を告げるだけでこんなにも緊張する。野菊には簡単に言えた。だからたとえ妖相手でも問題ないはずだと実証済みなのに。
「その、だから……」
同じ妖相手でも相手が問題なのだ、おそらく。
「着物は、気に入ったから。だから……ありがとう」
決して嫌なものではなかった。むしろ美しいと気に入ったからこそ、私が貶める存在になりたくなかった。
「君は口数が少ないだけに開いた時の破壊力が凄まじいな」
どういう意味かわからずにいると「そのままの意味だ」と言われた。呆れられている雰囲気に意味がわからないのは私だけらしい。事態を呑み込めないでいると、畳みかけるようにさらに驚愕の発言がもたらされる。
「ところで椿。すまないが、君に謝らなければならないことがある」
この短い期間に己の耳を疑うのは何度目か。
「謝る? 私に?」
「昨夜君と出会った場所まで出向いてみたのだが、刀は見当たらなかった。廃刀令の時代だ、警備に押収されてしまったのかもしれない。もし許されるのであれば改めて新しい物を贈らせてくれ」
ここに来てから、いや朧と出会ってから驚かされることの連続だ。ちなみに不動の第一位は求婚であるが、その中でもこれは上位に入る。
「どうして謝るの」
「大切に、いや。大切でなくともあれがないと不安なのだろう。寂しいと言うべきか?」
自分ですら持て余している感情を、朧は理解していると言うのか。
「私は別に……」
「ほら見たことか、やはり寂しいのだろう。いずれ夫婦になるのだから隠すこともない」