あなたの手で

今は、笑えない…。
私は

『それだけは…やめてください。』

と言った。

でも医師は、首を横に振り、

「彼は、命を取り留めただけで、完全復活したわけではありません。 彼の身にいつ、どのようなことが起きるのか分かりません。」

と厳しい口調で言った。

それでも、私は、

『お願いします!!』

と何回も頭を下げてお願いをした。

分かってる…

そんなこと…

意識が戻らないかもしれないこと…

最悪の場合、一生目を覚まさないかもしれないこと…

分かってる…

敬一は今、
意識不明の重体で、危険な状態でもあることくらい…

でも、

私は敬一に何もできなかった…。

敬一が目の前で倒れてるのに、

声も掛けてあげれなかった…

大好きな敬一の名前も呼んであげれなかった…

救急車の中で手を握ってあげることもできずに、

1人でガタガタ震えて、
現実から逃げて、
敬一の事故を今になって、
やっと受け止めることができた…。


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