恋味甘い【短編集】
「なん…で?」


「えっ?」


「なんでいるの!?」

ずるいずるいずるい…


そうやって、いっつも期待だけをさせる。



「いちゃ悪いのか?」

「だって、昨日…」


ポロッ


―あっ

泣いちゃダメだ。
変わらなくちゃ…


「じゃーなんで?

昨日は茜先輩と会ったあと、あたしのこと追いかけてくれなかったじゃん!!」


「すぐに追いかけた。」

「嘘だよ!!」


「本当だから!
昨日、すぐに追いかけた。そしたら、奈々の親父さんが出てきて。」


お父さん?

「そして、帰れって怒鳴られた。」


ははっと俊哉は笑ってみせる。



それであんなに、朝から機嫌が悪かったの?





「ななっ」


っ!

ぐいっと手を引っ張られ、自転車の後ろに乗せられた。


「えっちょっと俊哉?」

「いーから。」



俊哉は自転車を走らせる。

あれ?自転車なんて、あったけ?ずっと歩いて学校に行ってた気が・・・



ってことより!!


「俊哉っ学校と逆方向に向かってるじゃん!」



あたしの不安とは反対に俊哉はまたいつもの、俺様顔で、 『まぁね』


とだけ言った。

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